医薬品庁構想


 自由民主党の社会保障制度調査会(会長 鈴木俊一衆議院議員)と、科学技術創造立国推進調査会(会長 船田元衆議院議員)が薬事行政を担う新組織として、米国のFDA(食品医薬品庁)を意識した「医薬品庁」の創設を共同提案することを決めたという記事が薬業界紙で報道されました。

 社会保障制度調査会には、「薬事政策のあり方検討会」という委員会が設けられ、今年4月、薬事行政を所掌する組織のあり方について報告書をまとめています。報告書では、厚労省に寄せられる副作用情報は年間3万件にもおよんでいるのにもかかわらず、厚労省の安全対策に関わっている担当者の数は57人に過ぎないと指摘、安全対策の充実、強化を図るため、医薬品の承認審査、安全対策、副作用等被害救済等の薬事政策を一括して行う新たな行政組織を設け、最低でも、承認審査関係で約500人、安全対策関係でこれに匹敵する規模の要員として約300人を確保して、承認審査や安全対策の充実・強化を図るための事務局体制を整備することが不可欠であると提言しています。

 一方、科学技術創造立国推進調査会は、政府の掲げる「科学技術創造立国」の目標達成のため、わが国の研究開発力の強化施策の検討を続けてきました。現在は同調査会が中心となって、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(案)」の議員立法に向けて議論を進めているようです。また、同調査会は、特に医療分野における研究強化のため「健康研究推進プロジェクトチーム」を設け、必要な施策について議論を進めています。そして、「わが国としての一つの戦略に基づいて一体的に取り組んでゆく」ために、「健康研究司令塔機能」の創設、 及びFDAのような新たな審査体制として「医薬品庁」の創設を検討しているようです。今回の「医薬品庁」構想は、この2つの調査会の考え方の合体したものということでしょうか。

 ところで、私の議員現職時代、医薬品産業の健全な育成をテーマに、医薬品産業に携わる方々からなる「薬事政策検討会」を設け、「医薬品産業政策に関する提言」を検討し、昨年春、報告書をまとめていただきました。その内容は、医薬品の承認体制、安全確保体制の強化、医薬品開発研究の推進、薬価制度改革、流通、小売、調剤、薬局・病院薬剤師の役割の強化など、薬事全体にわたる広範な提言となっています。

 その提言の中で、特に、わが国の新薬開発研究の推進、国際競争力強化対策について、米国のNational Institute of Health(国立衛生研究所)のような機能を持つ日本型NIHを創設したらどうか、例えば、仮に「医薬品研究開発推進総合機構」というような組織を創設したらどうかと提案されています。科学技術創造立国調査会のいう「健康研究司令塔」の構想に近いものです。

 米国NIHは、米国健康福祉省(日本の厚生労働省に相当)の下部組織で、基礎的創薬研究から、疾患研究、臨床試験まで、医薬品開発研究全体にわたって、研究の実施、民間支援、官民研究関係者間の連携調整まで、行政・民間の垣根を越えて、新しい医療・治療法開発にあたっての推進役を果たしています。また、そのための次のような各種リサーチセンターや関連施設から構成されています。

NEI:国立眼研究所

NIA:国立老化研究所

NIGMS:国立一般医学研究所

NIAID:国立アレルギー・感染症研究所

NHLBI:国立心臓・肺・血液研究所

NLAMS:国立関節炎・筋肉・皮膚研究所

NHGRI:国立ヒトゲノム研究センター

NCR:国立癌研究所

NCRR:国立研究資源開発センター

NICHD:国立小児・人間発達研究所

FIC:フォガティ国際協力センター

NIDCD:国立聴覚障害・伝達障害研究所

NINR:国立看護研究所

NIDDK:国立糖尿病・消化器・腎研究所

NTAAA:国立アルコール依存症研究所

NIEHS:国立循環健康科学研究所

NIDA:国立麻薬研究所

NLM:国立医薬図書館       other

NIMH:国立神経研究所

      -医薬産業政策研究所の資料よりー

      -医薬産業政策研究所の資料よりー

わが国では、国の科学技術政策は、各省庁、研究機関で、各々の裁量の下、様々な研究が行われていますが、それらの活動を生かしつつ、米国のNIHにならって、新規医療法・治療法開発のための総合的な創薬研究推進戦略の策定と基本計画の立案、予算配分・調整機能を集中した組織を創設したらどうかと提案しているわけです。そして、組織は、科学技術、研究開発力の強化に留まらず、「医療の進歩・発展を目的とし、最終的には薬物療法の向上に結びつけることを目的」とするものであるべき」、としています。また、その円滑な運営を期するため、「医薬品研究開発推進基本法(仮称)」といった法令を制定することも提案されています。

 今回の自民党の構想は、「医薬品審査体制、安全確保体制の強化」と、「研究開発力の強化」の二つの側面からの議論のようですが、いずれにしても、これからのわが国の薬事政策を左右する大変重要なテーマとなりそうです。

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