藤井基之の国会レポート(その12)


師走を迎えました。光陰矢の如し、といいますが、特に今年は早かったように感じます。

 町には、ジングルベルが流れ、街路樹には今やすっかり年末の恒例行事となったイルミネーションライトが煌いています。12月は、慌しい中に、過ぎ行く年を惜しむ心と新しい年を期待する心とが入り混じって、何故か感慨の深い月です。

 さて、秋の衆議院総選挙では、「政権選択の選挙」という声もありましたが、結局、国民は小泉政権を選択しました。小泉内閣の構造改革には、各論において問題もありますが、構造改革の方向としては国民の支持を受けたというべきでしょう。

 選挙後の特別国会は、首相の選出、各委員会の委員長指名等一定の手続きを行っただけで9日間の短い会期を終わりました。しかし、年末、重要課題が山積です。

 まず、イラクへの自衛隊派遣問題。12月末に、在イラク日本大使館の優秀な若い外交官二人が殺害されるという悲しい事件が発生してしまいました。私は、インドネシア大使館に3年間赴任していたことがありますが、イラクだけでなく、政情不安な国は世界には沢山あります。それらの国で、時に、政府と反体制派の内乱状態の中で、危険を侵しながら責任を果たし続けている大使館員達が少なくないことを改めて思います。そして、12月15日、イラクのサダム・フセイン元大統領が米軍に発見、拘束されました。

 イラク復興支援のための自衛隊派遣に関する基本計画を発表され、国会は閉会中ですが、15日、16日、国会では、テロ特別委(国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク復興支援活動等に関する特別委員会)が開かれ、審議が行われました。今後、どのような時期に、どのような形で自衛隊が派遣されることとなるのか、フセイン元大統領の拘束により、イラクの治安は良くなるのか、アラブ問題の専門家でも意見が分かれる中、たいへん難しい判断が迫られています。

 さて年末。来年度予算編成作業が大詰めを迎えています。今週末には、財務省案が内示され、各省庁との最後の折衝が行われます。この来年度予算編成において、厚生行政に直接係る重要な問題は、年金制度改革と来年4月に予定されている医療費改定です。

 まず、年金制度については、前回ご紹介したように、今後、持続可能な制度とするための抜本的改革の議論が進められていますが、その中で、来年度予算に係る問題がいくつかあります。

 年金制度抜本改革のうち、まず、基礎年金の国庫負担3分の1を2分への引上げについて、来年度から段階的に着手することを政府は予定しています。そのため次年度予算においてどのような形とするか検討が行われています。また、保険料率の来年度からの段階的な引上げ(18%?20%程度への)について、予算編成の一環として検討が続けられています。

 一方、制度改革とは別に、年金給付額の賃金・物価スライドの問題があります。年金の給付額は、法により賃金・物価にスライドして増減することとなっており、平成15年度も最近の賃金・物価の下落傾向を踏まえて、減額されました。賃金・物価スライド制では、賃金・物価が上昇しているときは、これにスライドして給付額も増額されるのですが、逆に下落しているときは、給付額は引き下げられることなります。しかし、実は平成12年度から平成14年度にかけては、賃金・物価が下落しましたが、特例法によって凍結され、給付額は引下げられませんでした。今回、当初はこの3年間の凍結分も合わせ、2.1%の引下げも検討されたようですが、結局、平成16年度分の0.2%?0.4%の範囲で引下げられることなりました。お年よりの生活を直撃する問題ですが、公務員給与、民間給与も下がる中、苦汁の選択といわなければなりません。

 次に、次回医療費改定の問題です。1年間の医療費は約30兆円ですから、例えば、医療費1%を引上げるとすると、約3000億円のお金が必要となる、もし引下げるとすれば、3000億円のお金が節減されることになります。そして、国の負担は、全医療費の約23%ですので、国家予算としては、1%引上げなら約750億円の予算増、引下げなら750億円の予算を減額することができることになります。つまり、医療費改定は直接、国家予算に係ってくる問題です。ですから、これまでも2年に1回の医療費改定の前年には、必ず予算編成作業において大きな議論になってきました。

 そこで、次回医療費改定ですが、財務省サイドからは盛んに「マイナス改定」とすべきとの考え方が出されてきました。この場合の「マイナス改定」とは、診療報酬の技術料本体の引下げを行うことを意味しています。つまり、同じマイナス改定でも、技術料については引下げず(あるいは引上げ)、薬価基準の引下げのみを行い、薬剤費を含む医療費総額としてはマイナス改定とする、という「マイナス改定」もあり得ます。しかし、今回は、前回平成14年の1.3%の技術料の引下げが行われたときと同様、「技術料本体まで踏み込んだマイナス改定」をすべきと財務サイドは主張しています。

 その根拠は、最近の賃金・物価が下落傾向にあることを上げています。この「賃金・物価の動向を踏まえての医療費改定」という考え方は、「骨太の基本方針2003」でも、既に政府の基本方針として発表されてきたところです。しかしながら、中央社会保険医療協議会が、医療費改定の審議の参考として、毎回、前もって行っている医療経済実態調査という調査がありますが、本年、6月に実施した同調査によれば、病院、診療所、薬局の経営は、前回調査(平成13年)と比較し、悪化傾向にあることが分かりました。例えば、保険薬局の場合、法人薬局(全薬局の約9割)では、収入と支出の差(つまり収益)が,マイナス30.7%と減益となっている、また、個人の場合、10.3%と増えているが、家族従事者の給与等考慮すると実質的にはマイナスとなっています。

 このような結果から、マイナス改定とすることは医療機関の経営を一層悪化させることとなると、医療側から強い反対の声が上がっています。議論は、中医協で続けられていますが、来年度予算の編成作業が大詰めを迎える今週末までには決定されることになりましょう。先日、自民党の医療系国会議員(医師、歯科医師、薬剤師、看護師等)が共同で、医療機関、薬局の経営の安定化をはかるため、適切な医療費改定を行うよう党三役及び関係大臣に決議書を提出して参りました。

 また、今回の医療費改定では、薬価基準の改正が行われますが、本年の薬価調査では薬価基準と実勢価格の乖離巾は、約6.3%と発表されています。現在の流通時の調整巾は2%ですので、薬価調査に基づく改定率4%程度の引下げとなりそうだと伝えられています。これに加え、後発品のある長期収載品の政策的引下げが予定されているとのことであり、4%プラスαとなるといわれています。製薬産業がグローバル化し、また、ゲノム創薬の時代を迎えている今、我が国の21世紀の基幹産業として期待される製薬産業の育成と、薬価基準制度との整合性を考える時期に来ていることを痛感いたします。

 さて、一般用医薬品の規制緩和の問題も、いよいよ大詰めを迎えました。厚労省は、骨太の基本方針の「医薬品のうち、安全上特に問題のないもの」について、一般小売店での販売を可能とするという方針を踏まえ、選定検討会を設けて、本年10月から検討を重ねて来ましたが、16日、その検討結果を発表しました。それによりますと、検討会では、全ての一般用医薬品の中から、消化薬等15製品群を選定し、その品目を発表しました。また、規制緩和の議論では、「医薬品のままで」一般用小売店での販売を可能とするのか、それとも、「医薬部外品に移して」販売を可能とするのか議論になってきましたが、16日の発表では、坂口厚生労働大臣は、記者会見の席上で、「選定された医薬品を医薬部外品に移行し、一般小売店での販売を可能とする」との方針を説明しました。

 もし、医薬品のままでの販売を可能とするとした場合、薬事法の改正が必要となります。今回は、厚労省は薬事法の改正は行わないとの方針を決めた分けですが、もし薬事法改正をしてでも規制緩和を行うというのであれば、私は、販売許可制度のあり方について本格的に議論をすべきではないかと考えています。国民のセルフメディケーションのツールとしての一般用医薬品の拡充、医薬品の安全体制の強化、充実という観点から、幅広い議論をしなければ意味がありません。コンビニで医薬品を売ることができるようにするためだけの薬事法改正など、何の意味もありません。

 この厚労省の発表に先立って、安易な医薬品販売規制の緩和に反対して、「医薬品の安全について考える有志議員の会(会長橋本龍太郎先生)」が決議文を、また、薬剤師問題議員懇談会の「医薬品の販売規制緩和に関する検討会(座長津島雄二先生)」が意見書をまとめ、10日、津島先生他、メンバーの先生方とともに、厚労大臣に提出いたしました。今後の規制緩和の方向を見守りたいと思います。

 次に、薬剤師養成教育6年制の問題については、その実現に向かっていよいよ山場を迎えます。文部科学省が設けている「薬学教育の改革に関する調査研究協力者会議」は、薬剤師養成のための年限としては現在の4年では短すぎ、6年経の年限延長が必要である、との考え方をまとめました。同省は、学校教育法に改正に向けて、中央教育審議会の答申を受けた上で、来年の通常国会には、同法の改正案を提出する準備を進めるとしています。薬学教育の改革が叫ばれはじめて40年、ようやく実現の可能性が見えて来ました。来年は、薬剤師制度創設以来の重要な年となりそうです。そこで今回は、蕉門十哲の一人、俳人宝井基角と赤穂浪四十七士の一人、大高源吾(子葉)との有名な連句で、新しい年への期待を込めたいと思います。

[haiku=”年の瀬や 水の流れも 人の身も(基角)”/haiku]       
[haiku=”明日待たるる その宝船(子葉: 大高源吾)”/haiku]             

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