藤井基之の国会レポート2004(その8)


  今年の夏は、本当に暑いですね。30度を超える真夏日が続き、外を出て歩く気がしません。東京では8月11日までに連続37日間も30度以上の真夏日が続いていたそうです。これまでの連続真夏日第一位は1995年の37日間だったそうです。暦の上では立秋を過ぎましたが、12日も30度超、ついに記録を更新しました。

 7月末から8月初めまで臨時国会がありましたが、現在は閉会中です。臨時国会では、民主党が年金改革法廃止法案を提出しましたが、否決、廃案となりました。この後は、秋の臨時国会が10月頃に召集されるのではないか、と言われていますが、どうなるでしょうか。
アテネではオリンピックがはじまりました。12日深夜(日本時間)、女子サッカーが始まり、なでしこジャパンが、緒戦のスウェーデン戦に見事勝利しました。今回は、柔道、水泳、体操、マラソン、野球などメダルが期待されている種目が多く、寝不足の日が続きます。
 オリンピックと言えば、選手のドーピングがしばしば問題になりますが、日本薬剤師会が、日本体育協会、静岡県薬剤師会、埼玉県薬剤師会等と協力して、「アンチドーピング・ガイドブック」をまとめたとのことです。今年は、埼玉県で国体が開かれますが、同大会の支援、また青少年の健全なスポーツ育成のため、これをテキストとして活用し、貢献していきたいとのことです。ドーピングに使用される薬剤には、ホルモン剤など副作用の強いものもあります。外国人選手の間に多いようですが、薬に頼るのでなく、鍛え上げた自分自身の力と技とで戦ってほしいものです。
(平均寿命、また延びる)
 厚生労働省が、今年もまた、平成15年の平均寿命に関する資料を発表しました。発表された「平成15年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は78.36年、女性の平均寿命は85.33年と、前年と比較して男は0.04年、女は0.10年、また延びたそうです。高齢社会は、長生き社会。お年寄りが元気で安心して長寿を満喫できる日本を造るため、年金や医療、介護などの社会保障制度の強化がますます重要になっています。
 平均寿命の延びを死因別に分析すると、男女とも前年に引き続き悪性新生物、脳血管疾患等が平均寿命を延ばす方向に働いているそうです。これらの疾患に対する優れた薬剤の開発、医療の進歩の結果です。
 その一方、男女ともに自殺及び肺炎が平均寿命を減少させる方向に働いているとのことです。特に男性の自殺が増加し、平均寿命を減少させています。下の図は、それらを示したグラフですが、男性の自殺は年間に3万件を超えているとのこと、心が痛みます。景気は上向きにあるとのことですが、早く元気な日本に戻すことは政治の責任です。
 
                          平均寿命の延びに対する死因別寄与年数

(規制緩和)
 ところで、国会は閉会中ですが、いくつか新しい動き、情報がありました。
 まず第一に、規制緩和問題です。
 規制緩和については、現在は、政府の諮問機関である「規制改革・民間開放推進会議」(以下、「規制改革会議」と略します。)が検討を進めていますが、8月3日、同会議が中間報告をまとめ、政府に提出しました。
 この中間報告というのは、同会議が進めている議論の途中経過のうち主なものを報告したものです。最終意見は、例年、年末の規制改革会議の「見解」として政府に答申されます。この答申に基づいて、政府の規制緩和計画が作成されます。
 今回の中間報告をみてみますと、サブタイトルは「民主導の経済社会の実現」と銘打ち、次の2つの課題に取り組むとしています。

  1) 官業の民間開放の推進
  2) 主要官製市場の改革の推進
 官業とは、行政が所管している徴税、公的施設の運営、登録や許認可手続き、統計などの業務のことで、これらを「本当に公務員がやらなければならないのか、民間でも可能ではないか」、と議論しているということです。
 例えば、医薬品の製造承認等の審査業務も検討事例として挙がっています。
 しかし、医薬品有効性や安全性審査を民間でやるなど、あのアメリカでさえもやっていません。アメリカは、かつて、行政は「安全性」だけを審査し、有効性についてはこれを用いる医師など医療関係者が評価すればよい、という考え方でした。つまり、効かない薬は誰も使わないから市場には出てこない、との考え方だったわけです。しかし、やはり有効性についても公的な審査が必要ということで、過去の医薬品についてはすべて薬効再評価を実施するとともに、その後のものについては、FDAが厳しい審査を行っています。
 次に、「官製市場」というのは、事業自体は民間がやっているけれども、法令などいろいろ規則があって、結果的にその分野への参入が難しくなっているもの、つまりこれまで議論となってきた医薬品の小売販売や、病院診療所経営、酒類販売許可制などです。
 そこで、今回の規制緩和の目玉となっているのは、「混合診療の解禁」のようです。混合診療というのは「保険医療と保険外診療の併用」ということです。
 健康保険法では、保険で行う診療内容や薬剤は、厚生労働大臣が指定する、と規定しています。また、費用の額についても厚生労働大臣が定め、患者からは、健保法で定められた自己負担(3割)しか取ってはいけないとされています。そして、もし、厚生労働大臣が定めた診療や薬剤以外のものを用いた場合は全て保険外となり、かかった医療費の全額が自己負担となる、というのが原則です。
 しかし、これでは、外国では採用されている新しい先端的診療技術などが、日本ではまだ保険で採用されていないことから、折角の医療が受けられない、あるいは、高額になってしまう、などのケースが出てきます。このため、「特定療養費」制度が造られ、厚生労働大臣が「特定療養費」として承認した診療技術については、検査や処置など保険が適用される部分は保険で費用を出し、新しい部分だけ自己負担すればよい、という制度となりました。
 これに対し、規制改革会議は、今回、「患者本位の医療を実現する観点から混合診療を全面解禁すべき」と言っています。しかし、厚生労働省は、「無制限に混合診療を認めた場合、医療の安全性、有効性が確保できない。混合診療は、一定のルールの下で判断される特定療養費制度で対処すべき」、と反対しています。これに対し、規制改革会議は、「特定療養費は承認まで時間がかかり、また、認められる範囲が限定的で、是認し難い」と反論しています。
 「混合診療の全面解禁」の議論は、新しい診療技術だけの問題ではなく、医薬品にも議論が波及します。医薬品に関係する「容認されるべき具体例」としては、次の事項が挙がっています。
  ・ 適用外症例への使用
  ・ 老齢者に対する肺炎球菌ワクチン予防接種
  ・ ピロリ菌の除菌(3クール目以降の除菌)
 混合診療は、究極的には、「患者の選択肢を大きく広げる」というメリットの一方、「保険医療はどの範囲まで適用されるべきか」の議論に行き着きます。規制改革会議は「平成16年中に措置」としていますが、「混合診療の全面解禁」は「両刃の剣」的な側面を持つだけに、国民的な議論が必要ではないでしょうか。
 この他、今回の中間報告では、株式会社による医療法人を通じた医療機関経営、中医協の運営の抜本的な見直しなどが挙がっています。また、医薬品の販売規制については、措置状況(多分、医薬部外品への移行)の監視が個別検討事項として挙がっています。

(介護保険制度の見直し)
 先の通常国会では、年金制度改革が大きな議論となりましたが、これに続き、来年平成17年には介護保険の見直しが行われることを、前回、お伝えしました。この介護保険の見直しの方向について、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会が平成15年5月から議論を続けてきましたが、7月30日、その意見が公表されました。
 意見では、今後の制度見直しにあたって、
  1) 制度の持続可能性
  2) 明るく活力ある超高齢社会の構築
  3) 社会保障の総合化
を基本的視点に置くとしています。そして、次の方針を掲げています。
  1) 基本理念の徹底
    ? サービスの改革
    ? 在宅ケアの推進
    ? 地方分権の推進
  2) 新たな課題への対応
    ? 介護予防の推進
    ? 痴呆ケアの推進
    ? 地方ケア体制の整備

 厚生労働省は、特に「介護予防」の推進に力を入れたいようです。近い将来の要介護者数は350万人と推定されていますが、そうならないように、予防対策を充実したいということです。
 私も国会質問させていただきましたが、要介護度や要支援の方々は、症状の改善を目指すべきであるのに、介護の結果は、症状は悪くなっているとのデータもあるようです。
 年金改革も介護保険改革も、そして今後の医療保険制度の改革も、安心して暮らすことのできる社会保障制度を確立するための議論です。制度の現状と改革の必要性を国民に十分理解していただき、改革を進めて行きたいと考えています。

 あまりに暑いので、一茶の涼しい句を。

[haiku=” 涼風の  曲がりくねって  来たりけり (小林一茶)”/haiku]

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