藤井基之の国会レポート2006(その2)


1月末、東京は、大雪に見舞われましたが、立春を過ぎて、気温10度を越える日もあり、春が近づきつつあるのかなと感じます。

[haiku=”梅一輪 一輪ほどの 暖かさ(服部嵐雪)”/haiku]

東京では、まさに実感です。しかし、東北、日本海側はまだまだ雪の季節が続いているようです。雪国は美しいですが、同時に厳しいものですね。
2月10日、トリノ冬季オリンピックが始まっていますが、フィギュアスケートなど、日本選手の活躍を期待しましょう。

 第164通常国会は1月20日に召集されました。今年は、昨年から続くマンションなどの耐震構造偽装事件に加え、米国産牛肉問題、そしてライブドア事件、防衛施設庁の談合事件等が相次いで起こり、国会冒頭から野党からはこれらの問題の質疑が続きました。
 そんな中、国会は、まず1月、補正予算案を成立させ、衆議院では本番の平成18年度予算審議に入っています。
 さて、昨年、厚生労働大臣政務官を無事努め終え、ほっとしたのも束の間、この国会から、党の国会対策委員会副委員長を命じられました。国対の仕事は、国会の議事運営が円滑に進行するよう、党内や野党各党などと調整、協議すること。ほとんど連日、国対、国対正副会長会等が開かれます。自分の専門分野だけでなく、参議院全体にわたって気を配っていなければなりませんから、気が抜けません。大変多忙な仕事を命じられたものだとつくづく感じています。
 また、参議院の仕事としては、これまで厚生労働委員会委員を続けることに加え、予算委員会理事、憲法調査会委員、北朝鮮の拉致問題に関する特命委員会委員に指名されています。今国民の大きな関心を集めている委員会での仕事が増えたわけで、この国会は、一段と忙しくなりそうです。

健康保険法等の改正
 さて、この通常国会は、どうやら「医療制度改革国会」となりそうです。ご承知のように、昨年末、政府・与党医療協議会が、「医療制度改革大綱」を発表し、また、厚生労働省の社会保障審議会医療部会が「医療提供体制について」という意見書をまとめました。
 これらの大綱、意見書に基づいて、健康保険法、医療法等の改正案が策定され、2月10日、国会に法案が提出されました。
 まず、「健康保険法等の一部を改正する法律案」は、大綱で取り上げている3つの柱、?医療費適正化の総合的な推進、?新たな高齢者医療制度の創設、?保険者の再編・統合、を中心とし、健康保険法、老人保健法、国民健康保険法、社会保険医療協議会法、介護保険法等を一括改正する法案となっています。
(新しい高齢者医療制度の創設)
 注目された「新しい高齢者医療制度」の創設は、現行の老人保健法を全面改正する形で創設されることとなっています。
 まず、老人保健法という法律名を、「高齢者の医療の確保に関する法律」と改め、同法の目的を次のように定めています。
(改正案)
第1条
 この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行なうために必要な制度を設け、もって国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする。
 このように目的条項では、?医療費適正化計画、?保険者による健康診査の実施、?前期高齢者の費用についての保険者間の負担の調整、?後期高齢者に対する医療の給付、の4つが挙げられています。主な改正内容をみてみましょう。
(医療費適正化計画)
まず、医療費適正化を計画的に進めるため、厚生労働大臣は「医療費適正化基本方針」を定め、また、5年ごとに「全国医療費適正化計画」を定めることとしています。そしてこの国の適正化計画に基づいて、都道府県は、「都道府県医療費適正化計画」を定めることとされています。
全国医療費適正化計画には、次のようなことを定めることとされています。
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国民の健康保持の推進のための施策と達成すべき目標
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医療の効率的な提供のための施策と達成すべき目標
?
計画期間における医療費の見通し
?
目標達成状況の評価
また、都道府県医療費適正化計画では、次のような事項を定めることとされています。
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住民の健康保持の推進に関する施策と達成すべき目標
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医療費の適正化の推進に関する施策と達成すべき目標
?
計画期間における医療費の見通し
?
目標達成状況の評価
つまり国民の健康保持のため、例えば、生活習慣病予防のための事業を、5年を1期として国や都道府県が策定し、その対策によって糖尿病の患者の発症をどの程度抑えるか、それによって医療費をどの程度適正するか、目標値を定めて推進する。計画終了後、その成果を評価し、対策の見直しを行なうという考え方です。経済財政諮問会議などが、経済成長率の範囲に医療費の伸び率を抑えて行くべきという考え方であったのに対し、改正案は、国民の健康保持のための施策を推進することによって医療費を適正化する、という考え方となっています。
(保険者による健康診査の実施と保健指導)
まず、厚生労働大臣は、糖尿病その他政令で定める生活習慣病の健康診査(特定健康診査)の実施方針、及び健康診査の結果、必要と認められる者に対する保健指導の実施の基本方針を定める。これに基づいて保険者が特定健康診査実施計画を定めて実施する、というものです。40歳以上の加入者が、この特定健康診査の対象者とされています。
(後期高齢者医療制度)
次に、後期高齢者に対する医療の給付、つまり新しい高齢者医療制度です。対象者は、75才以上の後期高齢者、及び老人保健法と同様、65歳以上74歳未満の寝たきり等の者も含まれることとなっています。保険者は、後期高齢者が居住する都道府県の全市町村が加入した広域連合、とされています。
財源は、国が2分の1を負担、また後期高齢者から保険料を徴収することとし、全体の10分の1、残りは、健保、国保からの支援金、そして患者自己負担です。その患者自己負担はかかった医療費の1割とされ、ただし、現役と同程度の所得のある人は3割とされています。
一方、65歳?74才未満の高齢者(前期高齢者)は、65歳に入る前に加入していた健康保険にそのまま継続することになっています。これまで通常サラリーマンは、退社後、退職者医療制度に入り、その後国保に加入し、老人保健の適用を受けることとされていましたが、退職者医療制度は廃止(ただし平成26年度までに65歳未満のものには65歳になるまで存続)することとされています。
この新しい制度は、平成20年4月実施予定となっています。

(政管健保から全国健康保険協会管掌健康保険へ)
これまで、中小規企業については、国が財源の半分を負担し、保険者となってその運営を管掌する「政府管掌保険」がありました。今回の健康保険法改正で、この政管健保に替わって、全国健康保険協会という公法人を新設し、健康保険に加入していない被用者を対象として、協会が保険者となって医療給付などの事業を行う、「全国健康保険教会管掌健康保険」が創設されることになっています。協会は、東京に本部を置き、各都道府県に支部が置かれます。
そして、その財政運営は都道府県ごとに行い、保険料率も都道府県ごとに、財政状況等勘案して定めることとされています。
 (中医協の構成の見直し)
また、社会保険医療協議会法の一部改正では、中央社会保険医療協議会の構成が変更されることとなっています。これまで、事業者(保険者)側、診療(医科、歯科、調剤)側がそれぞれ8人、公益(有識者)側4人という構成でしたが、事業者7人、診療7人、公益6人とすることとされています。公益側は、支払側、診療側に対し、中立の立場(国民サイド)から医療費改定の調整を図るのが役割であり、この改正はその公益側の力を強化することが目的です。

医療法等の改正

医療保険改革と並ぶ医療制度抜本改革のもう一つの柱である「医療提供体制の改革」についても、この通常国会に医療法等の一部改正案が提出されています。
改正案は「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」で、医療法の他、医師法、歯科医師法、薬剤師法、保健師助産師看護師法、薬事法の改正案が含まれており、これらの法律を一括改正し、医療提供体制の改革を図ることとされています。
昨年、社会保障審議会医療部会がまとめた「医療提供体制に関する意見」で、「施設規制法である医療法を患者の視点を重視した医療法に変える」という趣旨のことが提言されていましたが、この意見にしたがい、医療法第1条の目的規定が改正されることとなっています。改正案をみてみましょう。
(現行医療法)
第1条
 この法律は、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
(改正案)
第1条
 この法律は、医療を提供する者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設間の機能分担及び業務の連携を進めるために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
 現行法の第1条では、確かに病院,診療所、助産所の開設、管理、施設整備に関する法律であるとされていますが、下線を付した部分が追加されることとなっています。
 この目的に添い、医療法及び関連法について次のような改正案が提出されています。
 
(地域の医療提供施設の連携)
 改正案第1条の2第2項に次のように、記載されています。

 医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受けるものの意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受けるものの居宅等において、医療提供施設の機能に応じ効率的に提供されなければならない。
 そして、医療連携を進めるために、病院、診療所は、患者が他の医療提供施設で診療や調剤を受けるときは、その患者の診療に関する情報や調剤に関する情報をその施設に提供すること、等を定めています。
今回の改正で、「医療提供施設」として薬局が位置づけられることとなっている(改正案第1条の2第2項)ことは、特筆すべきことです。医療法は、もともと病院、診療所、助産所に係る法律ですから、薬局とは縁遠い法律でした。医薬分業が60%に迫り、地域医療での薬局の役割が大きくなっていることからも、地域医療の連携の輪に薬局が参加することは当然といえましょう。
 
(医療提供体制の基本方針及び医療計画)
 厚生労働大臣は、医療提供体制の基本方針を定めることとされています。この基本方針では、医療提供施設の確保、医療従事者の確保、医療提供施設の相互連携などの基本方針が示されることとされています。
 また、都道府県は基本方針に即して、地域の実情に応じて医療計画を定めることとなっています。医療計画では、生活習慣病等の治療・予防、救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、居宅・在宅医療、医療安全、特に必要な疾患に対する医療対策等を定めることになっています。
 なお、在宅医療の推進対策の一環として、「薬剤師は薬局以外の場所で調剤してはならない」という薬剤師法の規定を改正し、患者の居宅で調剤の一部を認める改正を行なうこととなっています。
(医療に関する情報の提供)
地域の中で、患者がどの病院あるいは薬局に行ったらよいか選択するのに必要な情報を提供する仕組みをつくることが、重要な改正事項となっています。
改正案では、まず、医療提供施設に対し、その施設に関する情報を都道府県に報告することが義務付けられています。都道府県は、その情報を地域住民に公開することとされ、また、医療提供施設自身も、それぞれの施設に関する情報を住民が閲覧できるようにするか、あるいはインターネット等を利用して、情報提供することが義務づけられることとされています。
なお、薬局については、薬事法によって、この情報の都道府県への報告、住民への情報開示の義務付けが行なわれることとされています。
 
健康保険等の改正、医療法等の改正はこの通常国会の重要法案です。特に、新しい高齢者医療法は、今後の高齢社会を支える中核となる法律です。新しい制度がどのような制度となるのか、厚生労働委員会で審議されることとなりますので、私もしっかりと法案を吟味し、審議に備えたいと思います。
[haiku=”夕べ吹かれているみんなふるさとの草 (秋山秋紅蓼)”/haiku]

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