-アンチドーピング-
いよいよ、北京オリンピック。4年振りの大イベントに世界中が興奮しています。スポーツのテレビ観戦は私の趣味の一つですが、前回のアテネオリンピックの際は、アテネと東京の時差が7時間ありましたので、観戦は当然深夜。寝不足で困りました。その点、今回は北京、時差は1時間ですから、その心配をする必要はありません。
さて、オリンピックというといつも話題になるのはドーピング。もう20年も前になりますが、1988年のソウル大会で、米国のスプリンター、ベン・ジョンソン選手が男子100mで9秒79という驚異的な記録で1位となりましたが、ドーピング検査で筋肉増強剤のステロイド剤を使用していたことが発覚して、金メダルを剥奪されてしまいました。近くは、2004年のアテネ大会で、水泳の自由形で200m、400mで金メダルを獲得したオーストラリアのイアン・ソープ選手が、結局は潔白となりましたが、一時、ドーピング疑惑で世界を驚かせました。また、オリンピックではありませんが、プロ野球の巨人やヤクルトの外国選手がドーピングで退団となってしまいました。
ドーピングで使用される薬物は、筋肉増強を目的とした男性ホルモンや蛋白同化ステロイドなどが主なものですが、他にもアンフェタミンなどの興奮剤、モルヒネ、コカインなどの麻薬、利尿剤、副腎皮質ホルモン、局所麻酔剤などいろいろな薬物があるようです。ドーピングは、スポーツマンシップにもとる行為であるばかりでなく、ステロイド剤など重篤な副作用を有しており、安易な使用は、自身の体をも傷つけてしまいます。鍛え上げた筋肉は美しいものですが、筋肉増強剤で盛り上がった筋肉など見るも不快なだけです。
ところで、日本薬剤師会は、財団法人日本アンチドーピング協会と協力して「スポーツファーマシスト認定制度」をつくるという構想を進めているそうです。日本人のスポーツ選手でドーピングが問題となるケースは、筋肉増強剤や興奮剤を使用するなどの“意図的”、“確信犯”的なドーピングではなく、“うっかりドーピング”が多いのだそうです。つまり、風邪薬を飲んだら、その成分としてドーピング禁止薬物であるメチルエフェドリンやカフェインが含まれていた、というような事例です。スポーツファーマシストは、第一線のスポーツ選手がそうした“うっかりドーピング”をしてしまうことのないよう、個々の選手の相談に乗ったり、選手達のドーピングに関する研修をしたりすることのできる薬剤師を養成しようということだそうです。また一つ、薬剤師の活躍の場が開かれることとなります。
現代社会は、医薬品だけでなく、様々な薬物、化学物質が使用され、人はそれらに囲まれて生活しています。そうした化学物質と人間との関わりを研究し、探求する学問は「薬学」しかなく、その薬学を基礎としているのが薬剤師です。先の通常国会では、学校保健法が改正され、学校における環境衛生の確保体制の強化が図られることとなり、学校薬剤師の役割はさらに重要なものとなるでしょう。薬剤師の職能は、まだまだ広がる可能性を持っているのではないでしょうか。