藤井基之の国会レポート2006(その1)
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、新年早々、日本列島に大寒波が襲来。北日本から、日本海側各県、中部山岳地方は豪雪に見舞われました。特に、新潟県中魚沼郡津南町では、今年に入って最高3m48cmの積雪。10日現在でも3m40cmを超える積雪となっているようです。津南町には災害救助法が発令されていますが、町は雪の中に埋まり、いくつかの集落は孤立状態になってしまいました。1月7日には、自衛隊36名が入り支援活動を開始していますが、頑張ってほしいと思います。
さて、今年の通常国会は、1月20日召集予定ですが、課題山積の国会となりそうです。この国会を通じて、最大の課題となりそうなのは憲法改正問題。もちろん、まだ改正案が提出されるわけではありませんが、国民投票制度等を巡って活発な議論が始まりそうです。実は、私もこの国会から、参議院憲法調査会の委員に任命されていますので、じっくり勉強しなければなりません(詳しくは、参議院憲法調査会HPをご覧下さい)。
厚生労働分野での課題も沢山あります。第一に、医療制度改革です。昨年12月、政府は、医療制度改革大綱を閣議決定しており、これに基づいて、現在、健康保険法、老人保健法等の改正案、新しい高齢者医療制度法案等の法案作りが進められています。また、第5次医療法改正案も、やはり昨年まとめられた社会保障審議会医療部会の「医療提供体制改革」の意見書に基づいて作成作業が進められています。
第二に、医薬品販売制度改革にかかわる薬事法改正です。薬事法は、これまで、現行法の制定以来、何回かの大改正が行なわれて来ましたが、小売販売制度の改正は初めてです。この医薬品販売制度改革については、昨年12月に、厚労省の厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会が、報告書を出しています。その概略は、次のようなものです。
同報告書は、まず改正の理念として次の3点を挙げています。
? 改革は、国民の「セルフメディケーション」を支援する観点から行われるべきである。
? 全ての一般用医薬品を一律に扱うのではなく、安全性と国民の利便性を踏まえ、一般用医薬品の適切な選択、適正な使用に資するようなものとすべきである。
? 適切な相談応需及びリスクに応じ、情報提供が行われる仕組みを構築すべきである。
その上で、市販の一般用医薬品を、そのリスクの程度に応じ、特にリスクの高い医薬品(第1類「Aグループ医薬品」)、比較的リスクの高い医薬品(第2類「Bグループ医薬品」)、比較的リスクの低い医薬品(第3類「Cグループ医薬品」)の、3グループに分類することが適当である、としています。
そして、
? Aグループ医薬品は、一般用医薬品としての市販経験が少なく、安全性評価が確立していない、又はリスクが特に高いと考えられる成分を含むものであり、購入者に対し、「積極的な情報提供」を必ず行うよう義務付けるべきである。
? Bグループ医薬品は、まれにではあっても、日常生活に支障を来すおそれがある成分を含むものであり、「積極的な情報提供」に努めるよう義務付けるべきである。
? Cグループ医薬品は、日常生活に支障を来すほどではないが、副作用等により身体の変調・不調を生じるおそれがある成分を含むものであり、「積極的な情報提供」を行うことは望ましい。
また、医薬品の販売時においては、販売者側からその医薬品に関する「適切な情報提供」が行われ、購入者に十分に理解してもらうことが重要であることから、「対面販売」を医薬品販売に当たっての原則とすべきである、しています。
そのために、今後は、医薬品販売に際し、購入者へ的確に情報を伝え、相談に応じられる体制をより一層整備していくことが必要であり、薬種商販売業、配置販売業についても一定の資質を備えた者が設置される仕組みとすることが必要であると考える、と意見を述べています。
以上を踏まえて、これもまた薬事法改正案の作成作業が進められています。
この他、郵政改革に続く、政府系金融機関改革、特別会計改革、公益法人改革等、行財政改革関係法案がこの国会で審議されます。
一方、この4月には診療報酬・調剤報酬改正、介護報酬改正も行なわれます。今回の診療報酬・調剤報酬改正は、昨年末、内閣で引き下げの方針が決定され、引き下げ率は、全体で3.16%と発表されました。内訳は、診療報酬・調剤報酬の技術料部分についての引き下げが1.36%、薬価・材料の引き下げ分が1.8%とされています。
また、各科別では、医科1.50%、歯科1.50%、調剤0.60%、とされています。これらの数値は、いずれも総医療費(技術料プラス薬剤費)を分母としたもので、技術料を分母として計算した場合については厚労省は明らかにしていませんが、概ね1.7%?1.8%程度となると思われます。
国の平成18年度一般会計予算の政府案は79.7兆円で、対前年2.5兆円の減、平成10年度以来、8年ぶりに70兆円台に逆戻りするという、超緊縮予算案となっています。社会保障関係費は、20.57兆円で、対前年1931億円の増となっていますが、高齢化の進展によって年金給付費や医療費は増加を続けており、それだけでは、とてもその増加分を賄うことはできません。その不足分をどうするかが大議論となってきましたが、医療費については引き下げ改定を行なうことが、財務大臣と厚生労働大臣が折衝した結果決まりました。医療費を3.16%引き下げると、保険医療費全体では約1兆円、国の医療費負担分は約4分の1ですから、約2390億円の予算の節約となる、と財政当局は計算しています。まさに緊縮財政下での医療費改定です。1月11日、厚生労働大臣が、中医協総会を開いて、診療報酬、調剤報酬の改定を諮問、厳しい議論が始まっているようですが、引き下げによって医療の質を後退させるようなことはしてほしくないものです。
今年の4月から薬学教育6年制が実施となりますが、これに合わせ、実務実習に必要な指導薬剤師養成費、4年制卒薬剤師の生涯研修の強化のための経費として、1.8億円が厚生労働省予算案に計上されています。また、文部科学省予算案では、「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人の養成推進プログラム事業」が計上されていますが、その公募テーマに、「臨床能力の高い薬剤師養成」が取り上げられることとなっています。予算額は2.9億円です。これは薬科大学、薬学部の6年制に関する独自性のある優れた教育プログラムを公募し、国が支援するというものです。
今年も課題山積ですが、元気で頑張りましょう。
[haiku="冬菊を 焚き来し匂ひ 母の髪 ( 古賀まりこ ) "/haiku]