藤井基之の国会レポート2005(その1)

  新しい年が明けました。おめでとうございます。
皆様御元気で、お正月を迎えられたことと存じます。
 本年もよろしくお願い申し上げます。
 昨年は、オリンピック、パラリンピックでの日本選手の大活躍、イチロー選 手のメジャー安打数新記録など、明るい話題もありましたが、一方、頻回に及 んだ台風の列島上陸、中越地震、そして年末にはインド洋巨大津波と、国内外 とも大きな自然災害に見舞われた年でもありました。
 今年は、いきなり「ノロウィルス」の感染症というハプニングに見舞われ ましたが、どのような年になって行くのでしょうか。
 今年の干支は酉ですが、酉という文字はお酒に関係するようです。「穀物が醗 酵、酒を醸し、壷一杯になっている様子」を表したものだそうです。ですから、 「酉」にサンズイを付すと酒、「酉」の上にお酒の香気が立ち上がり、それを両手で神に奉げる様を表したのが、「尊ぶ」という字だそうです。
 そこで「酉」とは、「物事が成熟し、今まさに、壷の中から発散しようとしている」という意味を持つそうです。そうだとすると、2005年は、「いろいろな課題の議論が尽くされ、その実現に向かって動き出す直前の年」、ということになります。
 そういえば、厚生労働省案件で、平成17年度中に結論を出し、平成18年度通常国会に法案提出とされている重要な課題が、多いように思います。まさに「酉年」だからでしょうか。以下、それらをピックアップしてみます。 
1 医療制度、医療提供体制の改革
 平成15年3月、「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針について」が閣議決定されました。これは平成14年の健康保険法改正に際して、付帯決議として、?保険者の統合・再編、?新高齢者医療制度の創設、?診療報酬体系の見直し、の三点が、次の医療保険制度抜本改革のテーマとして掲げられましたが、これらの課題をどのように進めてゆくか、について政府が基本方針を定めたものです。
 また、医療保険制度と車の両輪である医療提供体制についても改革を進めるため、平成15年8月、厚生労働省は「「医療提供体制の改革のビジョン」を取りまとめています。
 これは、医療提供体制のあり方の将来ビジョンを描いたものですが、現状における問題点としては、?病床数が多い、医療従事者が少ない、機能分化が進んでいないなど医療の効率化・重点化の不足、?競争が働きにくい医療提供体制、?医療安全、小児等の救急体制の確保、?IT化の遅れ、医療の標準化の遅れ、医業経営近代化の必要、などが指摘されています。
 現在、基本方針、ビジョンに基づいて社会保障審議会で改革案の審議が続けられていますが、平成17年末までには意見をまとめ、18年通常国会への法案提出することを目途としています。平成18年は、医療費改定の年にも当り、今年の前半は介護保険の見直し、そして18年に向けての医療提供体制、医療保険制度改革、医療費改正の審議へと続いてゆくわけで、大変重要な年となりそうです。 
2 規制改革
 昨年末、規制改革・民間開放推進会議が第一次答申をまとめました。答申では、混合診療、中医協の見直し、医薬品の販売規制の見直しなどが、重点項目として盛り込まれました。
(1)混合診療             
 答申の原案段階では、現在の「混合診療の原則禁止」規定の全面的な廃止を求めたため、大変な議論となりましたが、行革担当相、厚労相の働閣僚折衝の結果、次のような答申となりました。

? 国内未承認薬の使用の解禁
1) 国内未承認ではあるが、外国で使用されている医薬品など、医師から申請があった医薬品について、それが適切なものか評価するため、専門家からなる委員会を大臣が設置し、年4回、定期的に開催する。
2) 米、英、独、仏で承認された医薬品については、自動的に評価の対象とする。
3) それら未承認薬について確実に治験を行えるようにする。
現在、特定療養費制度によって、混合診療が一定限度内で認められており、治験薬についてもその対象となっています。また、薬事法の改正によって、治験は製薬企業だけでなく、医師主導で行う臨床試験も治験として認められるようになりました。これらの制度を活用して、未承認薬の混合診療を認めることを検討するということです。
? 先進医療技術の実施
特定療養費制度では、高度な先進医療については、医療機関からの申請に基づいて中医協で審査し、厚労省が承認することにより混合診療が認められています。答申ではこれを拡大し、高度でないものも含め、先進的は医療技術について、一定水準の要件を満たす医療機関には、届出により混合診療を認めるようにすべき、としています。このため、
? その医療技術を評価するための専門家委員会を大臣が設置し、定期的に開催する。
? 委員会は、(ア)支障なし、(イ)中止又は変更、(ウ)保留、のいずれかの結論を3ヶ月以内に出し、通知する。
以上のような措置をまず現行制度内で実施し、必要な法改正については、平成18年通常国会に法案を提出することとされています。

(2)医薬品販売規制の見直し
 一般用医薬品の一般小売店での販売について、今回の答申でも引き続き重点項目として取り上げられています。今回は、次のような内容となっています。
「一般用医薬品販売制度について、消費者の利便と安全確保の観点から、医薬品のリスクの程度を評価し、医薬品それぞれのリスクに応じて、薬剤師等の専門家の配置のあり方や専門家の関与における情報通信技術の活用等を検討し、その結論を踏まえて、必要な措置を講ずるべきである。」
 答申では、これについても平成18年通常国会に法案提出するよう求めています。 厚生労働省は、平成11年に続いて、昨年、一部の医薬品を医薬部外品に移行する措置を取りましたが、それと併行して「医薬品販売制度改革検討会議」を設置して議論を進めており、今回の答申はこれを踏まえてのものです。
 薬事法については、平成15年に大改正が行なわれ、この4月から前面実施されます。この改正は、医薬品等の市販後の安全対策の一層の強化を目的としたものです。今回の規制緩和の動きに対し、医薬品の安全規制の重要さを、更に、訴えて行く必要を感じます。
ここ数日、東日本は大雪、豪雪が続き、寒さは厳しくなっています。21日には通常国会が召集され、郵政民営化関連法案を始め、国会では熱い議論が始まります。皆様、体調を整えて、年末、今年がいい年であったと言えるよう、頑張りましょう。

[haiku="初春まづ 酒に梅売る 匂ひかな (芭蕉)"/haiku]