藤井基之の国会レポート2003(その6)

東京も梅雨に入り、今日も雨模様。紫陽花も色を増しています。
国会議員として1年10ヶ月が経過し、御支援を戴いている皆様にご挨拶と、ご報告をしたいと考え、先月14日、議員として初めて「藤井基之と語る会」、いわゆる政治パーティを開かせていただきました。当日は1000人近い方々のご出席をいただきました。会では、このホームページに掲載した国会活動報告をまとめた冊子「藤井基之のあゆみ」を配布させていただきました。ご参会いただいた皆様に心から、御礼を申し上げたいと存じます。

<規制緩和>
 ところで総合規制改革会議は,規制改革アクションプログラム・12として重点項目を定め、検討を続けて来ました。そのうち、医療関係としては、次のような項目が取り上げられています。

 1 株式会社等による医療機関経営の解禁
 2 いわゆる「混合診療」の解禁
 3 医薬品の一般小売店における販売

 これらはいずれも国民の健康や生命に直結する社会的規制である医療法、薬事法に係る問題です。それだけに、これらの規制の緩和が経済対策の一環として取り上げられた当初から、議論が続いて来ました。 同会議の考え方は、「経済財政諮問会議」が6月中にまとめようとしている「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」いわゆる「骨太2003」に盛り込まれる予定となっています。
 ところで、疑問に思うのは、どうしてこれら項目が経済財政運営の「最重点項目」とまで銘打って取り上げられなければならないのか、という点です。もともと規制緩和は、許
認可制度等を緩和し、市場の自由競争を活発化することによって経済を活性化しようということで始まったはずです。

 しかし、例えば、一般用医薬品の販売規制の緩和は、どう考えても景気対策にはなりません。医薬品とは、趣味や趣向で使用されるものではなく、販売される場所が増え、競争が激しくなったからといって、総販売量が増える性格のものではないからです。驚いたことに、医薬品の販売規制の緩和を最も強く主張している改革会議の委員自身が、景気対策にはならない、と明言しているとのことです。

 では、何故、取り上げられているのか。「便利だから」、「夜間休日に薬を買えるよう
にするため」というのが、最大の理由だというのです。それならば、近年は、医薬分業が急速に進み、地域には救急診療所に対応するため、薬局の輪番制等の体制が整備されるようになってきました。また、夜間でも急ぎの患者に対応する旨を表示する薬局も増えています。

 それでもまだ夜間や休日の供給体制が不備だというのなら、まず、薬局薬店に対し、体制の強化を指導することの方が筋なのではないでしょうか。それもせずに、「薬局薬店が対応しないから、"安全性に関する議論はさておいてでも"、コンビニに医薬品を自由に売らせるべき」という主張は、「理由はどうあれ、まずコンビニに」という結論先にありきの、ずいぶん飛躍した議論といわざるを得ません。
 総合規制改革会議の役割は、日本経済の再生にあるはずですが、その効果も期待できない、にも拘わらず日本の優れた医薬品の販売許可制度を、単に「便利」だけを理由にして変えてしまうことが、本当に国民のためになるのでしょうか。

 さて、6月18日、内閣府は、骨太2003原案を公表しましたが、同案に、規制改革重点項目が盛り込まれました、一般用医薬品については、次のように記載されています。

 「医薬品販売体制の拡充医薬品の一般小売店における販売については、利用者の利便と安全の確保について平成15年中に十分な検討を行い、安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてについて、薬局・薬店に限らず販売できるようにする。」

 これについて、党厚生労働部会において、厚生労働省から「この記載は原則論である。医薬品として一般小売店で販売できるようにするか、医薬部外品として一般小売店で販売できるようにするかは、今後、関係当局で協議することとなる」と説明がありました。坂口厚労大臣は、医薬品のままでの一般小売店での販売には断固反対であり、そのような緩和を行うつもりはない。また、副作用のないもので医薬部外品としてよいものがあるか、検討することとしている。」としています。

 今後、どのような形で、骨太2003の考え方が検討されて行くのか、見守って行きたいと思います。

<国際麻薬統制サミット>

 5月26日、27日の両日、スウェーデン・ストックホルムのクラリオンホテルで、第6回国
際麻薬統制サミットが開催され、出席して来ました。麻薬サミットは、昨年4月、東京で開催され、アジア各国、米欧などから180人もの出席者がありました。
 今年は北欧スウェーデンでの開催であったため、欧州諸国が中心の会合となり、アジアからの出席は我が国だけでした。出席国は、デンマーク、エクアドル、エストニア、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェイ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア。ロシア、スロベニア、スウェーデン、イギリス、米国、EU、EMCDDA(欧州薬物監視センター)、UNODC、そして日本の19カ国、50人が参加しました。
 会議は、スウェーデンのシルビア王妃の挨拶をもって開会され、次の7つのセッションで行われました。

第1日
 第1セッション 同等のパートナーとしての若年者
 第2セッション パターンと広がり
 第3セッション 脆弱性:危険性と保護要因
 第4セッション  生活スタイル問題としての薬物乱用

第2日
 第1セッション 若年者の薬物乱用防止の実践例
 第2セッション 薬物乱用の防止と対応における教育制度の役割
第3セッション 若年者の中毒治療における特別の必要性

 薬物乱用は、我が国では、覚せい剤が中心ですが、ヨーロッパでは、大麻、ヘロイン、コカイン、アンフェタミン等の従来の薬物の他、エクスタシーと呼ばれるMDMA(メチレン-ジオキシ-メタンフェタミン)という覚せい剤類似薬物が、青少年の間でファッション
感覚で乱用され、問題となっているようです。
 そこで、今回の麻薬サミットは、「若年者の薬物乱用防止と治療」にフォーカスを当てた会議となりました。私からは、第2セッションの「パターンと広がり」の中で、日本における薬物乱用の動向と青少年に対する予防啓発活動、取締の現状等について紹介しました。会議では、大麻類をソフトドラッグとして一定の基準を満たしている店(Coffee Shop)での使用を認めるという寛容政策を取っているオランダに対し、各国から批判的な声が上がっていました。

会議は、若年者の薬物乱防止のための学校の役割、啓発教育等の需要性を確認、また薬物乱用の防止には国際的協力が不可欠であることを確認し、成功裏に閉会しました。

<食品衛生法等の一部改正>

 この通常国会で、食品衛生法、健康増進法が一部改正され、健康食品の対する新たな規制が設けられました。

 まず、食品衛生法では、「厚生労働大臣は、一般に食品として飲食に供せられている物であって、当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているものについて、人の健康を損なうおそれがない旨の確証がなく、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その物を食品として販売することを禁止することができる。」と規定されました。

 昨年、中国から輸入されたダイエット健康食品により、肝障害等による死亡例が続けて発生し、大きな社会問題となりました。しかし、一部の健康食品に「N-ニトロソ-フェンフルラミン」という物質が含まれていたことから、このダイエット食品の取扱について議論がありました。
 結局、医薬品フェンフルラミンと類似した化合物であり、無許可医薬品として販売禁止措置が取られましたが、N-ニトロソ-フェンフルラミン自体は医薬品として使用された前例はなく、安全性の問題があるかもしれない健康食品を規制するという趣旨の法律が整備されていなかったため、当初は混乱もありました。
 今回の事例では、薬事法上の禁止措置をとることが出来ましたが、本来食品であっても、使い方によっては安全性に問題があるものに対しても禁止措置がとることができるよう、上述のような改正が行われたものです。

 次に健康増進法では、 「何人も、食品として販売に供するものに関して広告その他表示するときは、健康保持 増進効果等について著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。」

 と、健康食品の誇大表示の禁止規定が設けられました。健康食品の表示に関しては、昭和46年の無承認無許可医薬品に関する厚生省薬務局長通知によって規制されてきましたが、同通知の趣旨は、「食品である以上、医薬品と紛らわしいような効能効果を標榜するような広告、表示をしてはならない。」「もし、そのような表示、広告がなされた場合は、薬事法違反とて取り締まる」というものでした。つまり、医薬品紛いの販売を規制するもので、健康食品自体としての効果等の是非や安全性に関する表示について規制したものではありませんでした。そこで、今回の改正により上述のような規定が設けられたものです。

 さらに厚生労働省では、「「健康食品」に係る制度の在り方に関する検討会」を設けて、新たな健康食品規制を作る方向で、議論を進めています。

 さて、国会会期末。既に、有事3法、(1)日本有事の際の、国と地方の責務や対処手
続きを定めた武力攻撃事態法(2)防衛出動時や防衛出動待機命令が出た時の自衛隊の行動を円滑化する改正自衛隊法(3)政府の安全保障会議の機能を強化する改正安全保障会議設置法の三法案が成立していますが、続いて今国会に、イラク新法が提出されることとなり、会期は40日程延長されることとなりました。昨年に続き、7月下旬まで論戦が続きます。 

 
[haiku="はまなすや 今も沖には 未来あり  (中村草田男)"/haiku]