アベノミクス・第3の矢

 平成24年12月の政権交代以後、安倍政権は経済の再生を最優先課題と位置付け、いわゆるアベノミクス3本の矢として金融政策、財政政策を講じてきました。そして、日本経済再生本部の下に産業競争力会議を設置し、昨年6月には第3の矢である成長戦略「日本再興戦略」を閣議決定し、以後実施に向けて精力的に検討が進められてきています
 医療分野に関係する動きを簡単に説明します。
(産業競争力会議の動き)。
 本年1月24日に閣議決定された「産業競争力の強化に関する実行計画」においては、重点施策の内容、実施時期と担当大臣が示されています。戦略市場創造プラン関連の中の「健康寿命の延伸」の項目には「日本版NIHの創設」、「医薬品・医療機器開発、再生医療研究を加速させる規制・制度改革」、「外国医師による外国人向け医療の充実」、「医療法人制度に関する規制の見直し」、「医療用医薬品から一般用医薬品への移行(スイッチOTC:検査薬を含む)の促進」、「先進的な医療へのアクセス向上(評価療養)」、「日本版コンパッショネートユースの導入」、「スーパーコンピューターを活用した創薬の促進」、「地域医療連携ネットワークの普及促進」等が明記されています。また、「適法性確認のための仕組みの創設」の項では、薬局等の店頭において自己採血による簡易な検査を実施できるようにすべく、平成25年度中にガイドラインを作成するとされており、具体的な手続きや留意点を示したガイドラインが厚労省から示され、本年4月から実施に移されています。地域の健康情報拠点としての薬局の機能の拡充されることを期待したいと思います。
(規制改革会議の動き)
 一方、規制改革会議においても、経済再生への突破口を開くという観点から検討が続けられており、本年3月以降、「医療用検査薬から一般用検査薬への転用の仕組みの早期構築に関する意見」をまとめ、厚生労働省は平成26年中に運用を開始すべきであるとされています。更に、評価療養、選定療養の仕組みに加えて「選択療養制度」を新設することも提案されています。選択療養の目的は、治療に対する患者の主体的な選択権と医師の裁量権を尊重し、困難な病気と闘う患者が治療の選択肢を拡大できるようにすることとされています。国民皆保険制度が形骸化しないような注意が必要だと思います。
(国家戦略特区諮問会議の動き)
 更に、国家戦略特区諮問会議においても、成長戦略に資するような措置を検討するとしており、特区の指定及び区域方針案が公表されています。特区は6箇所指定されることになっており、東京圏、関西圏、福岡市において実施が見込まれる特定事業として、「病床規制の特例による病床の新設・増床」、「保険外併用療養の拡充」、「国際医療拠点における外国医師の診察、外国看護師の業務解禁」が示されており、東京圏には更に「医学部の新設に関する検討」が含まれています。