薬剤師の需給予測の見直しを

4月、薬剤師国家試験の合格発表がありました。受験者は、新卒、再受験者その他合わせて13,773人と過去最多、そして合格者も10,487人とこれまた最多となりました。合格率は76.14%となっています。

薬剤師合格者数は、今年初めて1万人の大台に乗りました。ここ数年、薬科大学、薬学部の新・増設が相次いできました。その結果が、今年の薬剤師合格者数となって現れたわけです。

今年は国公立17大学、私立39大学、計56大学の学生が受験しましたが、2005年以降、新たに18大学が新・増設されています。2009年以降、これらの大学の受験者が加わっていくわけですが、1大学平均300人(既存私立大学平均)が受験するとすれば、いずれ受験者は約5000人増加することとなります。今年の合格率で計算すれば、その時には、薬剤師数は今より3800人増加することとなります。つまり、あと数年も経てば、毎年約14000人の薬剤師が誕生する時代が来ることになるわけです。

このままでは、今後、わが国の薬剤師数は、需要に対し更に過剰となって行くことは確実です。私は、参議院議員時代から、国に対し、今日の状況に照らして薬剤師の需給予測をもう一度行い、必要な対策を講ずるべきと主張してきました。

平成19年12月、医薬分業率は全国平均で59.7%、60%を超えた都道府県が24、そのうち6都県が70%を超えています。医薬分業における薬剤師の需要は、現在のところなお薬剤師不足の声がありますが、これから、分業が完成に近づくにつれ、需要の伸びは小さくなってゆきます。

その一方、今、医療の場では、医薬品の安全確保体制の強化が大きな課題です。薬局、病院、診療所など医療の場での薬剤師の活用を強化してゆく必要があります。

例えば、現在、わが国には約18000の有床診療所があります。有床診療所は、入院期間が48時間に制限されていましたが、昨年の医療法改正でこの制限が撤廃されました。今年の医療費改定で、有床診療所にも薬剤管理指導料の算定が認められましたが、有床診療所における医薬品の安全確保対策は大きな課題です。ところが、この有床診療所にいる薬剤師は1800人に過ぎません。多めにみても、1割の有床診療所しか薬剤師がいないのです。もし、全有床診療所に薬剤師を一人配置するとすれば、さらに16000人の薬剤師が必要であり、また、入院患者に対する薬剤管理指導を行うとすれば、さらに34000人の薬剤師が必要です。

これから6年の薬剤師教育を終えた薬剤師たちが生れてきます。その6年制薬剤師が十分に活動できる場を整備するという意味でも、今日の状況を踏まえた薬剤師数の正確な需給予測と対策の検討が緊要の課題です。