藤井基之の国会レポート2005(その4)

 東京は、桜も終わりました。桜前線は東北地方へ上っていったようです。
 まだ花見の余韻が残る春の朝(4月11日)、今度は、千葉、茨城などで強い地震がありましたが、幸い、大きな被害はほとんどなかったようです。新潟、福岡、そして関東と列島が揺れていますが、大丈夫でしょう。
 さて、国会は、平成17年度予算を年度内に無事成立させることができました。現在は、介護保険法の一部改正案等の提出法案の審議が進められています。郵政民営化の関連法案は、まだ政府・与党間の折衝が続いています。

(規制改革追加答申)

  3月24日、「規制改革・民間開放の推進に関する第一次答申(追加答申)」が、閣議決定され、公表されました。規制改革の第一次答申は、昨年12月24日に出されていますが、今回の答申はその追加となっています。
  追加答申では、まず、第一次答申で提言された混合診療問題などのその後の措置状況等について、フォローアップをし、提言の確実な実現を求めています。
  また、分野別各論では、IT、教育・研究、医療、福祉・保育、雇用・労働、農水・流通、エネルギー・運輸等の分野でこれまで取り上げられてきた事項、及び幾つかの新たな事項を挙げ、強くその実施を迫っています。
  医療分野では、次のような項目が取り上げられています。

1.情報開示の徹底
     医療機関の情報公開、患者への医療情報の開示
2. IT化の推進による医療機関の業務の効率化
電子カルテの普及、レセプト請求のオンライン化
3.診療報酬体系の透明化・EBMの推進

診療報酬点数算定のルールの明確化、診療ガイドラインの整備
診断群分類別包括支払い方式(DPC)の普及

4.保険者業務の充実・強化

保険者と医療機関の直接契約、保険者の調剤レセプトの直接審査・支払い
保険者と薬局の協力関係の構築
2000点未満調剤レセプトの再審査請求

5. 医療材料の内外価格差の是正等

医療材料の内外価格差の是正、医療用配合剤の承認基準の見直し
ジェネリック医薬品の使用促進

6. 医師・医療従事者の確保

7.公的な医療機関のあり方の見直し
 今回の追加答申には一般用医薬品の販売規制問題は入っていませんが、上掲のようにジェネリック医薬品の促進や医療用配合剤の承認基準の緩和など医薬品に関わる問題、保険者と保険薬局との直接契約など調剤に直接関係する問題が取り上げられています。これらの課題のうち、平成16年度内に措置すべき事項とされていたものについて、3月末、いくつかの通達が出されています。
  まず、4の、「保険者と薬局の協力関係の構築」については、3月30日、厚生労働省保険局長名で、「保険薬局に係る健康保険法第76条第3項の認可基準について」という通知が出ています。
  健康保険法第76条第3項では、「保険者と個別の医療機関、薬局が直接契約することにより、厚生労働大臣の許可があれば、診療報酬や調剤報酬を厚生労働大臣が定めた額の範囲で別段の定めをすることができる」と定めています。この規定は、従来、凍結された形となっていましたが、平成15年に医療機関について解除され、続いて、今回、保険薬局についても解除されたものです。
  また、同日付で、保険局長より、保険者と保険薬局が合意した場合、保険者自らレセプトの審査、支払いが出来ることなど、規制の緩和も行なわれています。
  次に、2000点未満の調剤レセプトの再審査についても。3月30日付けで通達が出ています。通達では、これまで、社会保険診療報酬支払基金で一旦審査されたレセプトについて、事務簡素化のため2000点以上のレセプトについて、保険者が再審査を請求できることとされていましたが、これを1500点以上に改めることとされています。
規制緩和の今後の最大の争点は、来年通常国会に、健康保険法の一部改正案が提出されるかもしれない「混合診療の解禁」となりそうです。

(ワクチンの供給確保)

  厚生労働省は、4月8日、「ワクチンの研究開発、供給体制等のあり方に関する検討会」を設置し、検討を開始しました。
ここ数年、秋になると、インフルエンザ・シーズンに備え、インフルエンザワクチンの供給は十分かが問題となってきました。近年は、鳥インフルエンザなど新型インフルエンザの流行が懸念され、各国で新しいワクチンの研究開発が進められています。
 また、2001年9月の米国同時多発テロに関連して、バイオ・生物化学兵器にたいするワクチンや治療用医薬品の確保が問題となり、私も、ワクチンや抗生物質などの医薬品の国家備蓄、国家買い上げ体制の整備について、国会質問しました。
  今回の検討会は、新型インフルエンザ、SARSなどに備えたワクチンの開発研究の促進、ワクチン受給の安定化方策等を中心に議論されることとなっています。

(年金・健康保険福祉施設整理機構法案)

  昨年の通常国会は、公的年金制度の改革が大きな議論となり、国民年金法の改正が行なわれましたが、その際、年金財政が厳しい状況にあり、年金保険料の引き上げなど国民の負担増を求めている中で、年金資金をつかった医療、福祉、保健施設等などについては、今後もこれら存続させるのかどうか、見直しを行なうべきだ、という厳しい議論がなされました。これを受けて、厚生労働省や自民党内で関係施設の今後の措置、取扱などについて検討してきました。
  その結果、この通常国会に、「独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案」が提出されています。現在、参議院先議で審議されていますが、社会保険病院や保健施設など関連施設の中には、地域の中核施設となっている施設も決して少なくなく、今後の措置のあり方について真剣な議論が続いています。

(社会保障制度に関する衆参合同会議)

  また、同じく、昨年の年金改革に続いて、さらに持続可能な公的年金制度とするために、その抜本改革について議論する場として、「年金制度をはじめとする社会保障制度に関する両院合同会議」が、国会決議により設置されることとなりました。
  この合同会議には各党会派を代表する35人(自民13人、民主12人、公明6人、共産2人、社民2人)で構成されています。
  第1回会合は4月15日にもたれ、公的年金制度の一元化を巡って議論が行なわれました。我が国の少子高齢化は否応なく急速に進んでいます。年金制度の議論は今後30年、50年を視野に入れた議論が必要であり、合同会議の議論の行方を注目して行きたいと思います。

[haiku="腸に 春滴るや 粥の味 (夏目漱石)"/haiku]