藤井基之の国会レポート2005(その5)
ゴールデンウィークも終わりました。沖縄、鹿児島と梅雨入りしたようです。東京はすっかり初夏様相。新緑が目に鮮やかです。
連休前の4月25日は、福知山線の脱線事故。107人の方が亡くなられるという最悪の事故となってしまいました。昭和26年6月の横浜桜木町で発生した国電火災事故(死者106人)、昭和37年の東京三河島で発生した電車の多重衝突事故(死者160人)に匹敵する大惨事となりました。電車の構造も、安全管理システムも、格段に進歩しているはずであるのに、40年、50年前と同じ悲劇が何故起きてしまうのでしょうか。
4月24日、福岡2区と宮城2区で、ともに民主党議員の辞任に伴う衆議院補欠選挙がありました。結果はご承知の通り、福岡では山崎拓先生が、また、宮城2区では、秋葉賢也先生がそろって勝利。わが党の完勝となりました。私も、応援で現地に入らせていただきましたが、その節には、地元の薬剤師会等の皆様には、本当にお世話になりました。感謝申し上げます。
GW明けの国会、国会も後半戦にはいりましたが、後半の焦点は、やはり郵政民営化。一応、党での審議を終え、国会に審議の場を移すこととなりましたが、今後も紆余曲折が予想され、国会会期の大幅延長も噂されています。
また、参議院で介護保険法の一部改正案の審議が始まりました。衆議院は、GW前に厚生労働委員会での審議が終わり、改正案の一部修正がありましたが、GW明けに、本会議で可決、参議院に送られました。
(中医協改革)
ところで、中医協改革の議論が進んでいます。日歯問題を契機に、厚労省が「中医協のあり方に関する有識者会議」を設置、今年2月から審議を進めてきました。直近では、今月10日に開かれています。では、どのような議論が行なわれているのでしょうか。厚労省が最重要課題として挙げているのは、次の事項です。
1)中医協の権能・役割の明確化と限定
医療政策の基本的な考え方や方向性を政府が公正、中立、透明な手続きを経て決定すべき。 ⇒⇒⇒ 政府の主導性の確立
保険契約の当事者間の利害調整の場としての中医協の権能・役割の明確化と限定が必要。 ⇒⇒⇒ 中医協の諮問機関としての位置づけの明確化
2)中医協内部の改革
診療報酬点数の決定は国民医療費の配分につながる重要な作業。特定団体の利益による恣意性を排除し、客観的、科学的なデータに基づき公正。中立、透明な手続きにより行なわれるべき。
中医協が設立されたのは、昭和25年、当時は、中央協議会と略称されていました。昭和36年、社会保険審議会法が改正され、現在のような、「公益を代表する委員(学識経験者)4人、支払側を代表する委員8人、医療側を代表する委員8人」という構成となったようです。国民皆保険体制の実施に合わせて改正されたものです。改正前は、公益を代表する委員はもっと多かったようですが、医療側から、公益側委員の意見に重点が置かれ過ぎるとして不満が出、委員数が減らされることとなったようです。また、これに伴い、医療側委員は8人とされ、その内訳は,医師5人、歯科医師2人、薬剤師1人という構成とされたようです。国民皆保険制度が発足する当初にあって、保険経済論的な議論が優先されることに反発し、保険医療の充実を図ろうとした医療関係者の意見が説得力を持ったのでしょう。
それから、44年、現在の議論は、?もっと公益委員を増やすべき、?中医協の権限を限定、明確化すべき、ということに集約されるようです。保険医療財政が困難な状況に陥り、また、医療が高度化、国民の選択も多様化している今日においては、国民皆保険体制をいかに堅持して行くかが課題です。混合診療や包括制の議論などを見ていますと、医療保険財政の健全化、安定化を最優先の課題としつつ、国民のニーズにいかに応えてゆくか課題となっていることが強く感じられると思います。
中医協改革の議論の中で、これまでの我が国の医療政策は、医療行政より診療報酬主導となってきた、との指摘があります。現在の医療制度抜本改革では、医療保険制度改革と併行して医療提供体制の見直しが合わせて進められており、中医協改革は、これらの抜本改革の議論と密接に関連した問題です。
来年は、2年に1度の医療費改定の年に当りますが、改革される中医協での医療費改定へのプロセスがどのように変革されて行くのか、そして医療提供体制の見直し、医療保険改革がどのような方向で行なわれて行くか、注目して行きたいと思います。
(包括点数制 DPCの影響評価)
医療保険改革の柱の一つである「診療報酬体系の見直し」の一環として、急性疾患の入院医療の診療報酬の包括制、いわゆるDPC(診断群分類別包括支払い制)が、特定機能病院に導入され、またその他一部の一般病院で試行的に実施されていますが、そのDPCによる影響を評価するための平成16年度調査の中間報告が、中医協でなされました。
同調査では、DPC導入病院(特定機能病院)82施設、DPC試行的適用病院62施設について、DPC未導入の病院との比較しながら、医薬品の使用動向について調査されています。
その結果は、次のようなものとなっています。
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DPC導入病院では平成14年7月?9月に後発品は65.7品目、購入金額シェアで1.30%であったが、平成16年4月?6月では、81.6品目、金額シェア2,36%となった。
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DPCを試行的導入病院では、平成14年7月?9月後発品品目数70.4品目、金額シェア3.51%であったが、平成16年4月?6月では、84.9品目、5.04%となった。
ただ、比較されたDPC未導入の病院でも、最近、後発品の使用が増える傾向にあるため、この結果だけでは、DPC導入によるものかどうか微妙な点もあるようです。
しかし、これとは別に、内服薬の変化があったかどうかについての調査があり、その結果をみてみますと、DPC導入病院では、55.5%の病院が、また、DPC試行的導入病院では44.5%が変化があった、と回答したのに対し、DPC未実施病院では、約80%が変化がなかったと回答しています。
「内服薬の変化の内容」は、「内服薬数絞り込み」、「中止可能薬の中止」、「処方日数短縮」、「後発品使用」等となっています。
DPC影響評価では、薬剤だけでなく、入院日数、臨床検査、看護の変化などの項目にわたって影響をみていますが、入院日数の短縮、臨床検査の絞込みなどの傾向もみられています。このような結果から、今後は、DPC導入病院の拡大、また慢性疾患の入院医療などについても包括制が検討されて行くと思われます。
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