藤井基之の国会レポート2005(その7)

 梅雨の最中。関東地方は、適当に雨がありますが、西日本では空梅雨が心配されていました。しかし、7月に入って大雨。自然はままならないものです。
 海の向こう、米国のメジャーのオールスターゲームに、イチロー選手が5年連続で選ばれました。ただ今絶好調の松井選手が選ばれなかったのは、真に残念。
 
(郵政民営化)

  さて、国会。6月19日までの会期を55日も大幅に延長し、8月13日の旧盆まで続くことになりました。もちろん、郵政民営化法案が最大の焦点。郵政民営化関連法案は下記の6法案です。衆議院での審議では、「郵政民営化特別委員会」が設置され、審議が開始されました。
郵政民営化6法案

(1)
郵政民営化法案

(2)
日本郵政株式会社法案

(3)
郵便事業株式会社法案
   
(4)
郵便局株式会社法案

(5)
独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案

(6)
郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
 郵政の郵便事業、貯金事業、そして簡保の3事業を分割民営化するものですが、この是非を巡って党内でも厳しい議論が交わされてきました。
  7月3日(月)、衆議院の郵政民営化特別委員会で賛成多数で可決、翌4日、衆院本会議に諮られました。反対、賛成の討論があった後、注目の採決が行われましたが、ご承知のように、賛成233、反対228、その差5票で可決という薄氷を踏む結果となりました。
  この後いよいよ参議院に舞台を移しますが、どのような結果となるでしょうか。
  ところで、日本の郵便制度は、明治4年、駅逓頭(えきていのかみ)前島密によって創られました。それまで日本には、つまり江戸時代には、「継飛脚」と呼ばれる幕府公用の飛脚制度,「大名飛脚」という各藩の飛脚、そして民間には「町飛脚」があったそうです。官、民の郵便制度が出来ていたのですね。その後、各地に飛脚問屋が現れ,民間の飛脚事業は発展、幕府・諸大名も利用したそうです。
  明治4年、郵便制度の成立によってこの飛脚制度が廃止され、郵便事業は国営化されたわけですが、当時、飛脚業界から猛烈な反対運動があったそうです。それから130年、今度はもう一度、郵便事業は再び官から民へで大議論。時代は動いているのですね。
  ところで、郵政制度の生みの親である前島密男爵、若い頃(江戸時代末期)、医者の家に「薬室生」として住み込み、薬の調合をしていた、ということですが、皆様ご存知でしたか。

(骨太の基本方針2005)

 6月21日(火)、小泉内閣恒例となっている「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」、いわゆる「骨太の基本方針2005」が閣議決定されました。骨太の基本方針は、財政政策と行政改革を中心として政府の今後の政策の基本方針をまとめたものです。
  骨太では、日本の現在の経済状況を、「バブル後を確実に抜け出した」時期と位置づけ、「攻めの改革」に乗り出す、としています。そして、これからの2年間を重点強化期間ととして、

(1)
小さくて効率的な政府をつくる

(2)
少子高齢化とグローバル化を乗り切る基盤を作る

(3)
民需主導の経済成長を確実なものとする
ことを目標に掲げています。
  このような基本姿勢の下、郵政民営化、政策金融政策、行政改革、財政構造改革等の課題を掲げています。社会保障改革については、次のような方針を打ち出しています。

『 「持続的な社会保障制度の構築

(社会保障の一体的見直し)
  「基本方針2004」を踏まえ、引き続き社会保障の一体的見直しを推進するとともに、年金についても平成16年度改革において明記された道筋に沿って引き続き改革を進める。

(持続可能性を確保するための過大な伸びの抑制策)
  超高齢化社会にあっては、社会保障制度が持続可能であることは国民生活にとって不可欠なことであり、社会保障給付費を今後考える上で「国民の安心」、「持続可能性」という観点は最重要である。そのためには、日本の経済規模とその動向に留意しなければならないと同時に、過大・不必要な伸びを具体的に厳しく抑制しなければならない。

      (中略)

(1)
社会保障給付費の伸びについて、特に伸びの著しい医療を念頭に、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標を設定し、定期的にその達成状況をあらゆる観点から検証した上で、達成のための必要な措置を講ずることとする。(中略)その上で、平成18年度医療制度改革を断行する。

(2)

(3)
平成18年度の医療制度改革においては、保険給付の内容について、相当性・妥当性などの観点から幅広く検討を行なう。また、診療報酬・薬価改定は、近年の賃金・物価動向や経済・財政とのバランス等を踏まえ検討する。

」』

 骨太の当初案では、社会保障給付費について、「マクロ指標」を設定し、その伸び率を管理する、となっていました。この「マクロ指標」として、「経済成長率(GDPの伸び率)」と「高齢化率」を用いるということが想定されていたようですが、厚生労働省がこれに強く反対、また、医療団体からも反対の声が上がりました。反対の理由は、「医療は景気の動向とは関係しない」、「景気が悪くなったらからといって、医療の質を落とすことはできない」等というものでした。結果的には、上記のような記載となりました。
  しかしながら、文中に「日本の経済規模とその動向に留意しなければならない」とあるように、今後もこの議論は続いて行くとみなければならないでしょう。特に、秋から年末にかけての、平成18年度予算案の編成作業において、来年4月に予定されている医療費改定をにらみつつ、議論は再浮上する可能性があります。

(介護保険法の一部改正)

 平成12年4月に介護保険法が実施されて5年目、同法附則では5年後に見直しすることとされていましたが、予定通り、今通常国会に同法一部改正案が提出され審議、6月、可決、成立しました。
  今回の改正では、予防給付の給付内容の見直し、食費及び居住費に係る保険給付の見直しなど、保険給付の効率化、重点化、新たなサービス類型の創設等を目指したものです。
  主な改正点を挙げてみましょう。
1  目的規定に、要介護状態となった高齢者党の「尊厳の保持」を明記する。
2  「痴呆」という用語を「認知症」に改める。
3  介護保険施設等での食費、居住費等について、施設介護サービス費等の対象外とする。
4  所得の状況等を勘案して厚生労働大臣が定めるものが指定施設サービスを受けた時は、食費、居住費について、「特定入所者介護サービス費」等を支給する。
5  「要介護状態」、「要支援状態」の定義の見直し
6  介護予防サービス等を受けた居宅要支援者に対し、介護予防サービス費を支給する
7  地域密着型サービスを受けた要介護者に対し、「地域密着型介護サービス費」等を支給する。
8  市町村は、地域支援事業として、介護予防事業、包括的支援事業(介護予防マネジメント事業等)を行なうものとし、「地域包括支援センター」を設置することができる。
なお、改正案は、衆議院で次のような一部修正が行なわれました。
1  地域支援事業のうち、要介護者等に対する虐待の防止、その早期発見のための事業、その他権利擁護のための必要な支援事業については市町村の必須事業(当初案では任意事業)とする。
2 
政府は、この法律の施行後、3年を目途として、予防給付、地域支援事業の実施状況等を勘案し、費用対効果などの観点から検討し、所要の措置を講ずる(附則に追加)。
 延長国会も残り30日。郵政民営化法案を巡って参議院での議論が続きます。また、厚生労働省関係では、障害者自立支援法案、労働安全衛生法改正案を残しています。ますます暑い夏となりそうです。

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