藤井基之の国会レポート2006(その8)

 暑い毎日が続きます。猛暑の中、私も元気で全国遊説の旅を続けています。  7月から9月にかけて、国会は閉会中。この期間を最大限に生かして、走り続けます。7月前半から8月前半は、北海度を皮切りに、東北、北信越へ、そしてお盆明けの8月後半からは、九州、中四国などを訪問する予定です。

(予算概算要求基準)

 さて、例年夏、各省庁は、財務省に次年度予算の要求(概算要求)を行いますが、この概算要求に先立ち政府から一定の要求基準が示されます。その基準をシーリングと呼んでいます。正確には「予算概算要求基準」といいます。今年は、7月21日、次のように社会保障関係の予算概算要求のシーリングが示されました。

年金・医療等に係わる経費:
 補充費途として指定されている経費等のうち、年金、医療等に係る経費(以下「年金・医療等に係る経費」という。)については、高齢化等に伴う増加等から各般にわたる制度・施策の見直しによる削減・合理化を図り、その増(各所管計5500億円)を前年度当初予算における年金・医療等に係る経費に相当する額に加算した額の範囲内において、各所管ごとに、要求する。
 国の一般会計予算は、ここ数年総額約80兆円となっていますが、その歳入の平成18年度の要求時点での内訳をみますと、税収が約44兆円、そして国債の発行額が約30兆円、その他となっています。つまり、国の一般会計予算は4割近くがいわば借金で賄われているわけです。これまでの国債の発行総額は770兆円といわれ、国は、毎年、19兆円ずつ償還、つまり、お金を返済しています。このような赤字予算を改善するために、政府は予算の抑制、縮小を図ってきました。
 しかし、いろいろな事情で国の必要な経費は年々増加しています。特に、医療費や年金、介護、福祉関係のなどの社会保障費は、高齢化によって増加しています。社会保障費は、国の会計から約20兆円が支出されていますが、年金を受け取る高齢者人口も増えていますし、医療費も増えます。つまり、医療費の引き上げなどの要素がなくても、社会保障費は自然に増えてゆきます。例えば、平成17年度の自然増は1兆800億円、18年度は8000億円と見込まれていました。
 しかし、この社会保障費の自然増を丸々認めて増額予算をつけるのではなく、できるだけ自然増を抑えてゆくという考え方から、シーリングが行われるわけです。平15年度以降でみますと、毎年自然増9000億円から1兆円を2200億円削減するというシーリングが続いてきました。そして、平成18年度も、8000億円の自然増を2200億円削減し、5800億円に抑えるというシーリングが示されました。今年の4月の3.16%の医療費引下げも、その一環でした。
 そこで、来年19年の概算要求ですが、この7月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」、いわゆる「骨太の基本方針2006」が発表されました。その中で、来年に予算編成に関し、次のように基本的な考え方が示されました。

 「今後とも高齢化の進展に伴い、社会保障給付費については大幅に増加し、そのための保険料・税負担も大きく増大していくと見込まれる。
 こうした中、社会保障制度を国民の安心や安定を支えるセーフティネットとしての役割・機能を将来にわたり果たし続けていくためには、制度自体の持続可能性・安定性を確保していくことが何より重要であり、そのためには、現役世代の負担が過度のものとならないよう社会保障制度全般にわたり普段の見直しを行いセーフティネットとして求められる水準に配慮しつつ、給付の伸びを抑制することが必要である。
 (中略)
 社会保障については、これまで各般の改革を行ってきたところであるが、以上のような観点を踏まえれば、今後5年間においても、次に掲げる事項を含め改革努力を継続していく必要がある。」
 以上のような骨太の基本方針にしたがい、冒頭のような概算要求の基準がしめされたわけです。つまり、来年度は社会保障費の自然増を7700億円と見込み、これを来年度も2200億円削減して、自然増を5500億円に抑えることとするという方針とされたわけです。
 これから、年末にかけての予算案作成の過程で、社会保障費のどの部分を見直しするのか、具体的な対策が検討されていくこととなります。

(地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム)

文部科学省の予算に「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」という事業がありますが、この事業に平成18年度から薬剤師養成教育も含まれることとなりました。 
 このプログラムは、医師教育を対象として実施されてきたものですが、平成18年度から薬学教育6年制が実施されることとなったことから、文部科学省が6年制カリキュラムの整備のため、薬剤師教育についても事業の対象とすることを決め、今年度から予算も増額されていました。
 同プログラムは、その目的を、「医師や薬剤師など医療人養成の分野においては、地域医療等社会的ニーズに対応したテーマ設定を行い、国公私立大学から申請された取組の中から、質の高い医療人を養成する特色ある取組について財政支援を行うことにより、大学教育の活性化を促進し、社会から求められる質の高い医療人の養成推進を図ること」とし、テーマ1「分野別偏在に対応した医師の養成」と、テーマ2「臨床能力向上に向けた薬剤師の養成」で構成されています。予算額は、医師、薬剤師合わせて12.9億円が計上されています。
 今年度は、薬剤師教育については、「薬学部(薬剤師養成の6年制学科)を置く国公私立大学が質の高い薬剤師を養成するための教育内容・方法の開発や展開等を行う取組」について、教育プログラムが公募され、各大学から55プログラムの申請があり、文部科学省の選定委員会で審査されました。
 その結果、今年度は、国立大学3大学、公立大学1大学、私立大学6大学の各大学のプログラム、及び11私立大学の共同取組1プログラム、計11プログラムが選ばれています。
 プログラムの例をあげてみますと、「実践的ヒューマン・コミュニケーション教育?薬剤師の基盤となる倫理観・使命感・対話力の醸成?」(広島大学)、「附属薬局を活用した臨場感溢れる実践教育?人間性豊かな安全で確実な薬物療法を提供できる実践型薬剤師の養成?」(岐阜薬科大学)、「臨床能力を育む地域体験型学習とその支援」(北海道薬科大学)等です。1プログラムあたりの国の補助金は2900万円までとされています。

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