秋の臨時国会は、9月14日の民主党の代表選挙を受け、内閣改造等が予定されていることなどから、どうやら10月になりそうです。長い休暇と映るかもしれませんが、実は、そうは休ませてはいただけません。マスコミでは、予算編成や経済対策など、政府内の審議だけが報道され、野党となった自民党は何もしていないように見えるかもしれません。しかし、閉会中であっても、税制改正、離島振興特別部会、高校授業料無償化における朝鮮学校の指定について、子宮頸がん予防ワクチンプロジェクトチーム、厚生労働部会平成23年度医療関係概算要求、看護問題小委員会等々、自民党内会議が頻繁にもたれています。
9月13日には、閉会中審議として、厚生労働委員会が開かれました。この厚生労働委員会で質問の機会が与えられました。国会復帰後の久しぶりの国会質問。臨時国会へのウオーミングアップのよい機会でもあり、質問に立つことにしました。
質問の主題は、今、大きな問題となっている「多剤耐性菌」に絞ることにしました。
ご承知のように、帝京大学医学部付属病院で、多剤耐性アシネトバクター(MRAB)による、58人という多数の感染者が発生、同菌が原因と疑われる9人の死亡者が発生するという事例が発生しました。 厚労省の調査では、同病院の院内感染対策の体制が極めて不十分であったことが最大の原因とされ、また、行政への報告の遅れ等々様々な問題点が指摘されました。実は、これと同じ時期、今年の初めから6月にかけて、愛知県の藤田保健衛生大学病院でも多剤耐性アシネトバクターによる20例(9月1日時点では24例)の感染が確認されていました。こちらの方は、2月10日最初に確認された直後、2月16日には保健所を通じて厚労省に報告する一方、院内では迅速な対策が取られていました。
質問では、この愛知県の事例を把握した時点で厚労省が医療機関に対し注意を呼び掛けていれば、帝京大の対応も違ったのではないか等、長妻厚労大臣に質しました。
このMRABと並行して、新たに、NDM-1産生多剤耐性大腸菌の感染者が獨協大学病院で確認されたことが発表されました。NDM-1は酵素(ニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ‐1)で、抗生物質を分解する能力があり、この酵素産生の遺伝子を保有する細菌は、カルバペネムはじめ、ほとんど抗生物質に耐性を持つことが確認されています。NDM-1多剤耐性菌は、インド、パキスタンなどで増加しており、また、英国、ベルギーなど欧州で多発していますが、いずれもこれらの国に渡航した経歴がある人達が感染しているということです。獨協大学の感染者もインドで医療を受けた経歴のある人でした。
今、英国のマスコミでは、この多剤耐性菌をスーパーバグ(Superbug)と呼んで大きな問題となっており、WHOも、多剤耐性菌の発生は、抗生物質の多用が主原因であり、各国に対し抗生物質の適正な使用対策を呼び掛けています。
日本病院薬剤師会では、平成17年度から専門薬剤師制度の一環として、「感染制御専門薬剤師」の認定制度を作っていますが、薬剤耐性菌感染症対策は、薬剤師の重要な職責の一つであり、まさに、薬剤師の出番です。