藤井基之の国会レポート2007(その5)

 5月、新緑が目に映え、初夏の風の快い毎日が続きます。通常国会も後半に入りました。国会審議の合間を縫って、各地を遊説し、また、各団体の総会の季節でもあり、挨拶の機会をいただくなど、ご支援いただいている皆様には、本当にお世話になり感謝いたしております。
(生協法の一部改正審議で質問)
  4月に入り、通常国会では、立て続けに2回、委員会での質問の機会がありました。まず4月19日、参院厚生労働委員会で、生協法の一部改正、正式には「消費者生活協同組合法の一部改正法案」の審議があり、質問に立ちました。
  生協は、終戦後、食品など日用品等の物資不足に国民が苦しんでいた昭和23年に発足し、それから60年にわたって多くの国民の生活を支え続けてきました。現在、組合数1116組合、共済組合員も5915万人、という大変大規模のものとなっています。日本の世帯数が約5000万世帯ですから、組合員数約6000万人ということは、ほとんどの国民が何らかの形で生協という制度を利用しているといってよいかもしれません。
この生協制度の根拠法令が、「消費者生活協同組合法」ですが、今、何故、生協法を見直すのか、改正の趣旨について、まず、厚生労働大臣に説明を求めました。
大臣からは、生協が行っている共済事業に関し、契約者保護のため、事業の健全性を担保するための規制の強化すること、経営責任体制の強化のため、規定の整備を図ること、改正趣旨の説明がありました。今回の生協法の改正の主要点を挙げてみますと、契約者保護の観点から、
?共済事業開始時の最低出資金の基準設定、共済事業との兼業規制など
?購買事業を隣接県まで事業区域を広げることを可能とする
?組合員以外の例外的利用を認められる場合の明示
?経営・責任体制の強化(員外理事の設置など)
等を行うこととなっています。
これらを踏まえ、概ね次のような質問をしました。
? 現在1000を超える生協が存在し、その規模は様々である。今回の法改正への円滑な対応が可能になるよう、厚生労働省は必要な対応をとるべきだと考えるがどうか
? 今回の改正にかかわる各条文の適用の細部については、政省令に委ねられているものがたくさんあるが、政省令の制定に当たっても、幅広い意見を踏まえる必要があると思うがどうか
? 生協は、組合員の相互扶助組織であり、株式会社等の他の経済事業体とは一線を画していると思う。今回の法改正を経て、今後の生協のあるべき姿等についてどう考えておられるか、大臣の見解は。
(決算委員会での質問)
  4日後の4月23日、今度は決算委員会の厚生労働・文教分科会で質問に立ちました。時間は50分、厚生労働、文教行政の全般について質問できます。厚生労働副大臣(大臣は衆院に委員会に出席)、文部科学大臣に次のような質問をしました。
(1)医療費適正化関連の質問について
医療の質の確保、向上と言う観点から、以下について質問しました。
1)インフルエンザワクチン対策について
? 平成16年3月、厚生労働省の要請により、2074万本のワクチンが生産されたが、431万本が残り、それらの廃棄による損失は全てメーカーが負担した。平成18年のインフルエンザシーズンでは2518万本を製造したが、600万本ぐらいが残るのでないかといわれている。需要予測の精度の向上、医療機関の適正な備蓄の強化、予備の備蓄分の国家備蓄など対策を考えるべきではないか。
? 感染症予防対策は国民にとっての極めて重要な「安全保障政策」であり、“長期的、戦略的”に考える必要がある。その一環としてのワクチン産業の振興は重要であり、厚生労働省が、「ワクチン産業ビジョン」を策定されたことを評価する。また、感染症の問題は、海外、特に開発途上国においては未だに深刻な問題である。WHOの熱帯病研究特別計画(TDR)において、マラリアワクチン開発研究が進められており、わが国においても、阪大がWHOの支援を受けて、ワクチンの開発研究を続けていると聞いている。わが国のワクチン産業の強化にもつながり、またわが国の優れた科学技術によって世界の感染症対策に貢献してゆくことも可能となるこうしたプロジェクトへの支援も検討いただきたいが、いかがか。
? 「新型インフルエンザ対行動計画」により、「トリからヒトへの感染を起こすウィルスを用いたプロトタイプワクチン(プレパンデミックワクチン)について、現在、ワクチンメーカー3社が、既に治験を終え、製造承認申請を行っていると聞くが、新型インフルエンザワクチンの現段階での生産態勢整備は、どのようになっているのか。
2)一般用医薬品について
薬事法の医薬品販売制度が改正され、一般用医薬品の安全対策の強化が図られている。国民のセルフメディケーションの意識が高まっている。医療費の適正化の観点からも、薬事法改正が行われたのを機に、有効性の高い一般用医薬品が供給されるように政策的に考えていただきたい。なお、医療用医薬品を一般用化した場合、医療保険の薬価基準から削除したらどうかという意見があるといわれているが、スイッチOTC薬にしたからといって、そのことだけで、薬価基準から削除するというようなことは、通常はあり得ないことを確認したい。
3)病院薬剤師の配置について
今般の医療法改正の目的の一つは医療安全対策の強化であり、医療法第6条の10の規定が設けられ、これを受けて、医療法施行規則第1条の11第2項で、「病院、診療所、助産所の管理者は、医薬品の安全管理に関する手順書を作成し、その手順書に従って業務を実施しなければならない、とされた。厚生労働省は、本年3月30日付で、「医薬品の安全使用のための業務手順マニュアル」を通達された。
医療法施行規則第11条では、「特に入院施設を有する医療機関」に対し、医療安全体制の強化を求めているが、平成17年の医療施設調査によれば、有床診療所は1347施設となっているが、有床診療所に勤務する薬剤師数は1490.2人、つまり全体の1割程度の有床診療所にしか薬剤師はいない、ということになる。このような状況では有床診療所で対応可能なのか。    
医療安全総合対策において、病院における薬剤部門の体制の強化を提言している。厚労省は、「病院における薬剤師の業務及び人員配置に関する検討会」を設置されたが、その後の検討経過について。
4)薬剤師の需給状況調査について
最近の薬科大学、薬学部の新増設の動きは、やや過剰ではないか。
平成14年時点で、薬科大学、薬学部は46大学、定員は8,110人であったが、平成19年度に新設されたものも含め、72大学、定員13,164人となっている。来年度も3大学の新増設が予定されており、平成14年には私学29大学が、来年、私学は倍になる。これまで、毎年、8000人から9,000人の薬剤師が生まれているが、来年は、合格率75%と同程度とすれば、10,000人近い薬剤師が生まれることとなる。
厚生労働省は、平成14年に薬剤師の需給調査によれば、病院やメーカーなどに勤務する薬剤師等も含めても、平成25年時点で13万人も薬剤師の余剰が出るとしている。このような予測があるにもかかわらず、文部科学省は、薬科大学、薬学部の新増設を認めてきた。文部科学大臣はどう思われるか。大学に対する適切な指導を強化すべきと考えるがいかがか。
薬剤師の需給環境は、平成14年予測時とは大きく変わっている。厚生労働省は、現時点での需給予測をするお考えはあるか。
5)薬科大学の附属施設の設置義務について
薬学教育においては、本年から薬剤師教育6年制が実施されたが、この6年制実施の理由として、医療機関や薬局における長期実習が大変重要な目的の一つとされており、大学設置基準で定められている薬科大学、薬学部の附属施設として、附属薬局の設置を検討したらどうか。
厚生労働省からは、
? インフルエンザワクチンの余剰問題については、需給見通し、医療機関に対する指導等、過剰な余剰が出ないよう適正をきしてゆきたい、ワクチン産業の育成については、アクションプログラムに沿って、具体的に対策を進めてゆきたい等、回答がありました、
? 一般用医薬品については、医療用、一般用の両方にあるということを理由に薬価基準から削除するということはないとの回答がありました。
? 病院薬剤師の配置については、現在、病院薬剤師の業務の実態調査を行っており、夏までには方針をまとめたい、とのことでした。
? 薬剤師の需給問題については厚労省から新たに調査を実施したい旨、また、薬科大学、薬学部の新増設については、文部科学大臣から、厚労省から需給調査の結果により、付属施設の問題も含め、厚労省と協議して対策を検討したい、と回答がありました。
(2)障害者自立支援法における知的障害者の重症度判定について
  障害者自立支援法の障害程度区分は、知的障害者、精神障害者、身体障害者の3障害統一の基準が作成されているが、この判定基準について、知的障害者や精神障害者を判定するには不適当ではないかという指摘がある。
特に最初に判定する79項目の多くが、寝たきり老人や認知症等の老人の介護に対する判定の基準であるため、知的障害者の場合、身体的な問題がなく、判定が低く出てしまことになるのではないか、ということである。
厚生労働省は、すでに、判定の基準を見直すことを検討していると思う
が、どのような状況にあるか。障害者の家族や、施設関係者等にその内容を十分説明し、意見も聞いたうえで行っていただきたいがどうか。
 これについては、厚労省において関係者の意見を踏まえ、障害者区分の勉強会において、6月を目途に見直しを検討して行きたい旨の回答がありました。
  この通常国会も会期は残り1ヶ月余となりました。残された任期を、精一杯頑張ってまいりたいと思います。
    

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