藤井基之の国会レポート2005(その8)

  暦の上では立秋を過ぎましたが、暑い日が続きます。炎熱の中で、甲子園では全国高校野球。そして宇宙から野口宇宙飛行士が無事、帰還。TVのスペシャル番組で日本人の宇宙飛行士第1号の毛利さんが、イチロー選手や松井選手と並べて話していましたが、たくましく、頼もしい日本人がまた現れました。
 さて、8月8日、国会は、全国民注視の中、参院本会議で郵政民営化法案の採決が行われ、賛成108票、反対125票で否決されました。私は賛成票を投じましたが、自民党内から22票の反対票が出ました。
 そして、予想通り、即日解散。猛暑の中を選挙戦に突入することとなりました。前回の衆議院選挙は平成15年秋、2年を経ずまた選挙。衆議院議員はタイヘンです。9.11選挙はどのような結果となるか、頑張るしかありません。
 今通常国会は、郵政民営化法案審議のため会期が大幅延長され、1月21日から8月8日まで、ちょうど200日間の長丁場でした。厚生労働大臣政務官として、政府側の立場で迎えた初めての国会となりました。労働担当政務官として、委員会で何回か答弁に立ちました。昨年までは質問する側、今回は答弁する側であったわけですが、正直にいって、質問する側に立ちたい、と何度か思いました。いずれにしても、政治家として、貴重な経験をさせていただきました。
 この国会では、厚生労働省関係では、介護保険改正法案、障害者雇用促進法案等の法案が成立しましたが、障害者自立支援法案、労働衛生安全改正法案の2重要法案が廃案となってしまいました。
 さて郵政民営化で大波乱が続く中、7月から8月にかけて、厚生労働省が重要な2つの報告書を発表しました。

(中医協改革)

 まず、7月20日に発表された、「中医協の在り方に関する有識者会議」の報告書です。
 この有識者会議は、昨年の日歯問題に端を発し、まず、内閣官房長官が主宰する「社会保障のあり方に関する懇談会」が中医協改革について意見をまとめ、これを踏まえて、厚生労働大臣が同会議を設置し、今年の2月から審議を続けてきました。
 有識者会議の議題は、

(1)
診療報酬改定に関する企画・立案等中医協の機能と役割の在り方

(2)
中医協公益の強化

(3)
病院等医療関係者の多様な意見を反映できる委員構成の在り方
 
(4)
委員の任期の在り方

(5)
診療報酬の決定手続きの透明化、事後評価の在り方

(6)
医療現場や患者等国民の声を反映する仕組み
 などとなっています。
 中医協は、厚生労働大臣の諮問を受けて、医療保険の診療報酬、調剤報酬の改正等を審議、答申する、大変重要な審議会です。
 中医協は、委員数は20人と法律で規定され、支払側(健保、国保、政管健保など保険者の代表、被保険者の代表)8人、診療側(医師会、歯科医師会、薬剤師会代表)8人、そして公益側(経済専門家など有識者)4人の三者構成となっています。
 今回の意見書を見ますと、まずこの中医協の構成について、1)公益委員の強化、2)病院等医療関係者の意見を反映できる委員構成、を挙げています。  
 そこでまず、第三者(あるいは一般国民)の意見をより反映できるようにするため公益側委員を増やすこと、そして病院代表を増やすこと、という提案です。
 次に、中医協の権限の見直しです。中医協は、診療報酬の個々の報酬(点数)を決めているだけに、その改定後の医療の動向に大きな影響を与えます。したがって、医療費の改定の内容を決めることのできる中医協の権限は大変大きなものです。
 意見書では、今後の医療においてどのような診療サービスを充実して行くかといった医療の基本施策については別の審議会(社会保障審議会)で審議し、中医協はその方針に従って個々の点数を審議する場とする、というものです。 
 今後の中医協の改革の動向が注目されます。

 (医療提供体制改革)
 次に、8月1日(月)、厚生労働省から、「医療提供体制の改革」に関する社会保障審議会医療部会の意見の中間まとめが発表されました。
 厚生労働省は、医療保険制度改革とともに医療提供体制の改革を「医療制度抜本改革」と位置付けており、平成15年8月には、「今後の医療提供体制のビジョン」を発表しました。
 今回の中間報告はそれを踏まえてまとめられたものですが、この意見を基に、今後、医療法の改正が必要なものについては改正案が作成され、来年の通常国会に提出される予定です。
 そこで、中間まとめの内容をざっと見てみましょう。
 中間まとめでは、全体を次の9つの課題に分けて、意見を述べています。

(1)
国民の選択の支援(医療機関に関する情報をいかに国民に分かりやすく伝えるか

(2)
医療安全対策の総合的推進

(3)
医療計画制度の見直し等による地域の医療機能の分化・連携の推進
 
(4)
母子医療、救急医療、災害医療及びへき地医療体制の充実

(5)
地域、診療科等での医師の偏在解消への総合対策

(6)
在宅医療の推進

(7)
医療法人制度改革

(8)
医療を担う人材の養成と資質の向上

(9)
医療を支える基盤の整備
 医療安全については近年大きな問題となってきましたが、中間まとめでは、「医療機関、薬局について安全管理の指針、医療従事者の研修の実施等体制整備を進める必要がある。また、医療機関等における医薬品や医療機器の安全使用、管理体制を整備する必要がある」としています。
 これに関連して、医療施設の人員等の項で、「医療の質の向上や医療安全、医療の高度化等に対応する観点から、病院薬剤師や看護職員等に関し(中略)、人員配置基準を充実させることについて引き続き検討することが必要である」と指摘しています。
 また、地域医療計画の見直しにより、地域の医療機能の分化、連携を推進する必要があるとしています。特に、「医薬品や医療機器の提供体制の在り方に関し、医薬分業が5割まで達しており、薬局が地域において医薬品等の提供を行う上で重要な役割を果たしている施設であることを踏まえ、医療提供体制の中での薬局の役割、位置付けの明確化を検討する必要がある」と提案しています。
 中間まとめの核心は、医療計画の見直しによる「地域医療体制の連携の強化」であると思われます。まとめでは、「それぞれの地域にふさわしい機能分化と連携の図られた望ましい保健医療提供体制を実現して行く」と述べられています。
 9月11日(日)の選挙はどのような結果となるか、郵政民営化法案否決の後だけに、自民党にとっては厳しい選挙になるとの見方もあるようです。しかし、結党以来50年、日本の社会、経済をリードし、豊かで、自由で、平和な日本を築いてきたのは自民党政権です。必ず国民から支持していただけるものと信じています。

[haiku="汽車たてば そこに極暑の 浪の群れ (吉岡禅寺洞)"/haiku]