藤井基之の国会レポート2004(その3)

 春、弥生。関東地方は、2月中旬に春一番が吹いて以来、暖かな日が続いていましたが、3月に入ってまた冬に逆戻りしたような寒い日になったり、日中、歩いていると汗ばむ程の陽気になったり、寒暖を繰り返しています。しかし、日に日に、暖かさを増しています。桜の開花は、今年も早いようです。

 さて、鳥インフルエンザが猛威を振るいました。山口、大分に続いて京都で鶏の大量死。特に京都での発生は、発生後の処理が不適切なこともあって、大きな問題となりました。また、養鶏場周辺に棲息する烏にH5型ウィルスが検出され、野生の鳥を介しての鳥インフルエンザの広がるのではないかとの懸念も生んでいます。
 しかし、山口、大分では、同県内で他の地域に感染が広がることはなく、どうやら終息。また、現時点では、日本では鶏から人への感染も報告されていません。タイ、ベトナムなどでの人への感染状況等から、鶏糞を大量に吸い込む等の濃厚な接触がないかぎり人への感染はない、と専門家は判断しているようです。
 国会でも大きな議論を呼んでいます。先週、党の鳥インフルエンザ対策本部で、専門家から、対策について意見を聞きましたが、今後の対策として現場の隔離、消毒、そして患鶏の殺処分でよいとする意見と、鶏へのワクチン接種を行なうべき意見とに、割れていました。3月9日、厚労省が、鳥インフルエンザについての当面の考え方を発表しましたが、いずれにしても、一刻も早く全面的に終息させるための対策が急がれます。
<決算委員会>

 3月8日の決算委員会で質問に立ちました。決算委員会ですから,審議テーマは国政全体に亘りますが、私は年金関係を中心として質問しました。

 年金については、この国会に国民年金法、厚生年金法等の一部改正案が提出されています。来年度予算案でも年金改革関連予算が盛り込まれており、予算委員会での重要な議論課題となっています。

 今回の決算委員会は平成14年度の決算についての審議でしたが、年金をテーマにするということになれば、年金改革との関連から質問を組まなければなりません。決算委員会には、各省の決算の概要及び会計検査院の決算検査の概要についての説明資料が提出されており、質問は、会計検査院の決算検査報告等も参考にしました。

 年金改革では、年金保険料を財源としたグリーンピア、老人ホーム、保養ホーム、年金住宅融資等の福祉還元事業を今後どうするかが大きな課題となっています。これらの施設や事業は、長期間にわたって保険料を納付し続け、またし続けてきた国民に対する福祉還元の意味を持ち、一定の役割を担ってきました。
 例えば、各地にある厚生年金会館は、地域の低廉な価格の文化基地として。しかし、今日においては、民間にも同様な保養、健康施設、老人ホーム等も沢山あること、また、経営が思わしくなく、赤字を累積しているところが少なくないこと等から、年金制度の改革が迫られている中で、大切な年金財源が年金の支給以外に使用されていてよいのか、という指摘が、党内でも強く出されていました。そして、自民党としては、「年金保険料は、年金の給付以外の事業には一切使用しない」という大原則が決まっています。
 
 会計検査院の決算検査においても、厚生年金老人ホーム等が赤字を累積していることが多いこと、受給者の利用率が低いこと、施設が本来の目的に沿って活用されていないこと、等と指摘されていました。このため、こうした福祉還元事業の経営状態について、その理由、今後の対応等について質問しました。
 また、国民年金保険料の未納が4割もあり、収納率を高めることが課題となっていますが、特に若い世代に対して,公的年金の意義、世代間扶養の考え方等、年金教育を強化すべきではないか、と質しました。
 そして、医療、介護、福祉、年金等の社会保障に要する費用は、2025年に176兆円となると予想されているが、社会保障のあり方、安定財源等について方向性を出すべきではないかと、小泉総理にもお考えについて質問しました。
 質問時間は45分間でしたが、質問し残した問題もあり、時間を大変短く感じました。
 決算委員会のもようは、NHKで、一般放映されましたので、ご覧戴いただいた方も多いと思いますが、テレビの威力は凄いものです。電話やメールで全国各地からいろいろなご意見を戴きました。
 そのご意見の中に、「公的年金は、現役層が今の高齢者を支え、そしてその現役層が高齢になったとき、その時代の現役世代が支える(下図参照)、という世代間扶養で成り立っている。公的年金は、社会連帯があって成り立つものであるということを、特に若い世代に理解してもらう必要がある」という私の発言に対し、「若い人は、自分が若いときに支払った保険料が積み立てられ、やがて自分が年を取ったときに、そこから支払ってもらうと考えている。」、という意見をいただきました。

世代間扶養の概念

(厚労省資料より)
 確かに、年金は保険料を一定期間納付して初めて受給の資格が付与されるものですから、そのようにお考えになるかもしれませんが、しかし、それだけでは個人的な貯蓄と変わりないことになってしまいます。
 年金は、20代から、30年も40年も保険料を納付し続けて、その結果として受給権を得ることができる制度です。その間の経済成長に伴って、物価も賃金水準も上がって行きます。ですから、将来、高齢になって支給される額は、その30年、40年前の物価、賃金をベースとしたままの支給額では、生活は困難です。国民年金や厚生年金などの公的年金は、そのような将来の経済動向に見合った年金の支給を保障しています。
 そのような物価動向を踏まえた支給額が保障された公的年金は、貯蓄等と比較してこれほど有利な金融商品は他にない、といわれています。
 どうしてそのようなことが可能なのか。それは、支給を支える保険料は、40年前の、受給者が現役時代であったときに納付した保険料によっているのではなく、支給を受ける時代の現役世代の所得に応じて納付された保険料に支えられているからです。
 加えて、公的年金には国庫からの負担があります。そして、それも何十年前に納入された税金によっているのではなく、その時代の、国家経済や国民所得に基づく税金から賄われています。そして、所得は人様々ですが、そうした個人的差異も配慮しつつ、できるだけ平準化して保険料、支給額も調整されています。世代間扶養、社会連帯がなければ、公的年金制度は成り立たない制度と言えましょう。
 公的年金が世代間扶養、社会連帯の上に成り立つものであることを、特に若い人たちに理解してほしいものです。

< 6年制問題>

 学校教育法の改正案と、薬剤師法の一部改正案が、3月5日、閣議決定され、いよいよ、国会に提出されました。法案が出されましたので、薬剤師養成教育6年制の輪郭がはっきりして来ました。そこで、現行法と改正案とを比較しつつ、関連部分の内容をみてみましょう。
学校教育法
(現行)
第55条 第55条大学の修業年限は、4年とする。ただし、特別の専門事項を
教授研究する学部及び前条の夜間において授業を行なう学部については、
その修業年限は4年を超えるものとすることができる。

? 医学、歯学を履修する課程又は獣医学を履修する課程については、前
項本文の規定にかかわらず、その修業年限は、6年とする。
(改正案)
第55条 (第1項は、上記と同じ)
 ? 医学を履修する課程、歯学を履修する課程、薬学を履修する課程のう
ち臨床に係わる実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの又は
獣医学を履修する課程については、前項本文の規定にかかわらず、その
修業年限は6年とする。

薬剤師法の抜粋
(現行)
第15条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けること
    ができない。
   一 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学において、薬学の正
    規の課程を修めて卒業した者
   ニ (略)
(改正案)
第15条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受け取ること
    ができない。
   一 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学において、薬学の
正規の課程(同法第55条第2項に規定するものに限る。)を修めて卒業
した者
   ニ (略)
そして、この改正法の施行時期は、2年後の平成18年度からとされています。
 以上の通りですが、整理してみると次のようになります。
 まず大学学部の4年、6年などの修業年限は、学校教育法の第55条で定められていますが、今回の改正案から、薬学部を

   ? 臨床に係わる実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの
   ? ?以外のもの

と2つに分けています。

 そして、薬学を履修する課程のうち、「?以外のもの」とはどのようなものを想定しているかについて、文部科学省は、「薬学に関する研究、製薬企業における研究・開発・医療情報提供などたような分野に進む人材の育成」を目的とする課程と、説明しています。

 次に、薬剤師国家試験の受験資格は、薬剤師法第15条によって定められていますが、改正案では、上述の?、つまり6年制学部に対して国家試験の受験資格を与えることとしています。

 それでは、上記の「?以外のもの」は受験資格はどうなるか、薬剤師法改正案では、薬剤師法に新に附則が設けて、次に該当する者についても受験資格を与ることとしています。

1) 改正前の(現在の)学校教育法に定められた薬学の正規の課程を修了した者(つまり、現行の学部4年制の修了者)

2) 改正学校教育法の臨床薬学以外の基礎薬学(前述の?)の学部4年を修了し、かつ薬学の修士又は博士の課程を修了した者であって、臨床に係わる能力を培うことを目的とする薬学部課程と同等以上の学力、技能を有していると厚生労働大臣が認定したもの

 附則では、この4+2の修了者に対する受験資格の付与については、改正案の施行後12年間の時限を設けることとしています。今回の改正案の施行は、平成18年度からとなっていますので、平成18年度の入学生から29年度の入学生までの学生について、特例的に適用されることとなります。
 これから6年制についての通常国会での審議に入ります。学校教育法改正案は、衆議院の文部科学委員会で、また薬剤師法改正案は、参議院先議(衆議院より先に参議院で審議すること)で、厚生労働委員会で審議されることとなっています。
 今回は、学校教育法改正にちなんで、学校に関連した名句です。

[haiku="背の高き 卒業生が 泣き始む  ( 作 住田祐嗣 ) "/haiku]