藤井基之の国会レポート2004(その5)
ゴールデンウィークも終わり、木々の葉も新緑から次第に緑を深めています。ここ数日、東京は梅雨のような天気が続いていますが、国会周辺の銀杏の樹も緑を増し、夏に向かって装いを整えつつあるようです。沖縄ではもう梅雨に入りましたね。
さて国会では、年金改革法案(国民年金法等の一部改正法案)が衆議院を通過し、現在、参議院で審議されています。
衆議院の審議中、政府・与党の年金改革案に反対する民主党が、切り札として取り上げた閣僚の年金保険料の未納問題で大波乱がおきました。福田官房長官が未納問題にけじめをつける、ということで退任されました。また一方、問題が、取り上げた民主党自身の党首にも及んだことから、同党の反対姿勢が大きく変化しました。
そして、自民党、公明党、民主党の三党合意がまとめられ、これに基づいて年金改革法案の附則として次のような事項を規定することとし、5月11日、衆議院本会議で承認されました。附則に盛り込まれたのは、次の通りです。
○ 政府は、社会保障制度に関する国会の審議を踏まえ、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付のあり方を含め、一体的な見直しを行いつつ、これとの整合を図り、公的年金制度について必要な見直しを行うものとする。
○ 前項の公的年金制度についての見直しを行うに当たっては、公的年金制度の一元化を展望し、体系のあり方についての検討を行うこととする。
○ 5月18日、厚生労働委員会で1回目の国民年金法等改正案の審議がありました。この日は、小泉総理が厚生労働委員会に出席され、国民の最大関心事であることから、NHKでテレビ中継されました。
私も、質問に立つこととなり、40分ほど時間をいただきました。年金保険料の未払い問題は、閣僚に止まらず、他の与野党国会議員にも及びました。そこで、私も自分の支払い状況を調べてみました。私は元厚生労働省の国家公務員でしたが、その後、参議院議員となるまでいくつか職場が変わりました。そこで年金も、共済年金、厚生年金、国民年金と移り変わりましたが、今日まで、年金保険料の未納はありません。
保険料未納問題は軽視できない問題であります。しかし、私は、野党の未納問題の議論のあり方に強く疑問を感じました。
つまり、国会議員まで手続きミスをしてしまう複雑な年金制度をもっと分かり易いものにすべきだ、という議論ならわかるのですが、野党は、小泉総理の40年以上も前の大学浪人時代まで引き出して、年金改革の本質的な議論を行おうとせず、未納問題を政略の道具としてしまいました。その結果、民主党党首の交代劇にまで発展してしまいました。
私は、質問に当たって、NHKによるテレビ放映があることも踏まえ、原点に返って、今、何故、改革を進めなければならないのか、今回の改革では何をしようとしているのか、首相や、厚生労働大臣から、国民に分かり易く説明していただくことを、心がけました。
国民に負担を課すような改革はやりたくないと、年金改革を先延ばししてしまうことは簡単かもしれません。現在の65才以上の高齢者は約2500万人、年間の年金支給額は42兆円、一人当たり年間約170万円です。しかし、20年後の2025年には、65才以上人口は3500万人となると推計されています。
仮に年金支給額がかわらないとしたら、単純な計算でも、170万円×3500万=約60兆円となります。一方、この年金を支え手となる若い世代(15才?64才)の人口は現在8500万人ですが,2025年には7200万人まで減ってしまい、保険料収入も激減します。今のままで、年金財政はますます厳しいものとなります。年金積立金は150兆円は大変な額ですが、年間42兆円の支給額からすれば3年分に過ぎません。
もし、野党が言うように、今の改革案を廃案とし、2、3年時間をかけて案を練り直すことになれば、その間に国民にさらに大きな負担を強いることとなるでしょう。
野党でもなく、評論家でもない、政権政党である自民党がそのような無責任なことはできません。年金については、この改革のあと、さらに、一元化の問題、国民のライフスタイルの多様化や勤務形態の多様化(パート勤務、契約社員など)に対応できる柔軟な制度の検討など、議論は続いて行きます。政権政党の責任の重さを改めて痛感しています。
(6年制)
学校教育法の一部改正案は、4月27日衆議院で承認され、参議院に送られました。衆議院での採決の結果は、与野党全会派が賛成、全会一致でした。薬剤師という職能に対する期待の大きさの現われです。
学校教育法の採決に当たって、衆議院文部科学委員会で付帯決議が行われました。以下のような内容です。
○ 各大学における指導体制の整備、教育・実習施設の確保、特に、長期実習のための指導者、施設の確保に配慮すること。
○ 第三者評価体制の整備を進める等、医療人としての倫理観が養えるような質の高い教育の維持、向上を図ること。
○ 薬剤師の生涯学習の機会を充実するよう配慮すること。
○ 修業年限の延長に伴い、経済力の差が進路選択、学業の成就に影響を与えないよう配慮すること。
○ 大学、民間研究機関等において、国際競争力を持つ創薬等の研究開発を担う人材の育成に努めること。
衆議院に続いて、学校教育法の改正案は参議院文教科学委員会で審議、5月13日採決が行われ、可決されました。そして、5月14日参議院本会議で採決され、全会一致で改正案は承認、成立しました。
一方、薬剤師国家試験受験資格の改正を行うための薬剤師法改正案は、参議院先議の取り扱いとされ、厚生労働委員会で審議、5月13日、こちらも全会一致で可決され、翌日の5月14日、本会議で承認されました。なお、薬剤師法の改正案の可決にあたり、厚生労働委員会でも付帯決議が行われました。主な項目を挙げてみます。
○ 医療の担い手にふさわしい質の高い薬剤師を養成するという今回の法改正の趣旨にかんがみ、薬学教育における実務実習の充実を図るため、病院、薬局等における受入体制を確保すると共に、実務実習の指導に当たる薬剤師を早急に養成すること
○ 医療機関等における医薬品に関連した医療事故を防止するため、薬剤師による薬歴管理を通じた服薬指導の充実及び注射薬など病棟における薬剤管理の促進を図る等、医療機関における薬剤師の役割の明確化及びそのための環境整備を進める。
その後、薬剤師法改正案は、衆議院に送付され、衆議院厚生労働委員会で審議が行われる予定となっています。衆議院で可決されれば、すでに成立している学校教育法と合わせ、法律は完成です。6年制も今国会での実現の見込みが大きくなりました。あと一息です。
[haiku="薔薇五月 午前の海と 午後の海 (原田青児)"/haiku]