藤井基之の国会レポート2005(その10)

 10月に入りました。初旬、秋雨が続きましたが、すがすがしい秋空が戻ってきました。
  今年のプロ野球は阪神タイガーズの見事なリーグ優勝に沸きました。阪神ファンの方はおめでとうございます。巨人ファンの方は、来年の原巨人に大いに期待しましょう。
 さて、特別国会は、郵政民営化審議を中心に、11月1日まで42日間の会期で進んでいます。郵政民営化法案は、10月11日、衆議院本会議で可決、そして14日(金)、参議院本会議で可決、成立しました。思えば、参議院で否決された後は、国会解散、衆議院総選挙、自民党の大勝、特別国会での郵政民営化再チャレンジ、そして成立、と、まさに激動の2ヶ月でした。
 厚労省関係では、「障害者自立支援法案」、「労働衛生安全法改正案」が審議されています。いずれも、先の通常国会に提出されましたが、解散のあおりを受けて、審議未了のまま、廃案になってしまったものです。特に障害者自立支援法案は、衆議院で一部修正の上、民主党も賛成、可決されていました。この国会に再提出、参議院先議で可決した後、現在は衆議院で審議されています。
 その法案の内容は、次のようなものです。
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身体障害、知的障害、精神障害の3障害のばらばらになっている支援制度を一元化し、精神障害のある方にも同じ制度を適用する。
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施設体系を6つの事業に再編し、地域生活支援、就労支援のための事業、重度の障害者を対象としたサービスを創設する。
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雇用施策との連携を強化する。
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支援費支給の必要度の客観的な尺度(障害程度区分)を導入する。
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国の費用負担(2分の1)の責任を明確化するとともに、利用者にも応分の費用を負担(サービス費用の1割、但し、きめ細かな負担軽減措置、所得段階に応じて月額上限を設ける)していただく。

 養護学校卒業者の55%は、福祉施設に入所されていますが、そのうち就労により施設を対処できる方はわずか1%だそうです。障害のある方に対する自立支援を推進し、バリアフリー社会を実現するためにも重要な法案です。
(医療制度抜本改革の動き)
 今年も残すところ2ヶ月半。医療制度抜本改革の議論も拍車が掛かってきました。この秋から来年にかけては、医療保険制度改革、医療提供体制の改革、そして、来年4月の診療報酬改定について、併行して議論が続いて行きます。医療保険制度では、?保険者の統合・再編、?新しい高齢者医療制度の創設、?診療報酬体系の見直しを中心に、また、医療提供体制の改革では、地域医療計画の見直しを中心として第5次医療法改正が予定されています。
 高齢化の進展によって、現在31.5兆円の国民医療費は、20年後69兆円に達し、国民の負担は大変大きなものとなると予測されています。国民皆保険体制を持続可能なものとしてゆくためにはどのような改革が必要か、社会保障審議会医療保険部会、及び医療部会を中心に、議論が行なわれています。医療保険部会、医療部会から、すでに中間まとめが出されており、この先月の活動報告でもご紹介しました。
 自民党においても、今月から、社会保障制度調査会医療委員会が医療制度改革について本格的な審議を開始しました。既に3回の審議が行われています。
 ところで、医療制度改革については、内閣府の経済財政諮問会議でも、構造改革・規制改革の一環として議論されています。経済財政諮問会議は、国の経済・財政政策について審議し、政府に答申するのが役割ですが、同会議のメンバーである民間委員が、次のような意見書を提出しています(意見書全文が、経済財政諮問会議のホームページでご覧になれます。)。
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医療給付費の伸び率については、骨太2005で、医療費適正化の政策目標を設定することとされた。
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もし、医療費の伸びが現状のまま推移すれば、対国内総生産比(対GDP比)は、2004年度5.2%であるが、2025年には8%台にも達し、国民の負担は大幅に増加する。
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したがって、政策目標として、GDPの伸び率に高齢化率を加味した高齢化修整GDPの伸び率を用い、その伸びの範囲に医療費を抑えることとすれば、概ね5%台に医療費比率を留めることができる。
   (高齢化修正GDPの伸び率=GDPの伸び率+65才以上人口も増加数/全人口)
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厚生労働省は、医療給付費の伸び率について、このような政策目標を経て、またその目標達成を評価する手順を医療制度改革案に明示して、諮問会議に提示してほしい。
 GDPの伸び率を医療費の増加率の指標とすべきという考え方は、この春?夏にも骨太2005のまとめに当たって、経済財政諮問会議から提案され、厚労省が強く反対、医療費の適正化は診療報酬体系や医療提供体制の合理化等で行なうべき、と大議論となった経緯があります。再びこの議論が再燃する可能性があります。
 この議論は、来年に予定される診療報酬改定にも影響を与える大議論ですが、意見書では、その診療報酬改定についても、「近年の物価・賃金動向、厳しい財政状況、国民負担軽減の観点等を踏まえ、大幅なマイナス改定を行なうべき」と意見を述べています。
これから年末にかけて、来年度予算編成、診療報酬改定、そして医療制度抜本改革の議論が続いてゆきます。慌しい年末になりそうです。

[haiku="秋燈を明うせよ 秋燈を明うせよ  ( 星野立子 )"/haiku]