藤井基之の国会レポート2006(その5)
晴天を皆連休に取られてしまったように、連休明けの東京の空は雨模様の毎日となりました。が、プロ野球は、セパ交流戦の真っ最中、WBC世界一となった今年は野球が盛り上がっているようです。また、サッカーワールドカップも来月に迫り、世界中が徐々に暑くなり始めているようです。
さて、通常国会の会期末は6月18日、残すところほぼ1ヶ月となりました。
行政改革法案、教育基本法一部改正案などの重要法案を抱えたこの国会、1ヶ月という期間が短く感じられ始めています。
先月ご紹介したように、私が所属する厚生労働委員会においては13本の法案が提出されており、(うち1本は、文部科学委員会との共管で、文部科学委員会で審議)、他の委員会と比べても審議案件は盛りだくさん。厚生労働担当の国対副委員長として多忙な毎日が続いています。
厚労委員会所管の法案のうち、下記の4法案は参議院先議とされ、既にいずれの4法案とも審議を終え、可決し、衆議院に送付済みとなっています。
? 薬事法の一部を改正する法律案
? 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律
? 職業能力開発促進法及び中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律の一部を改正する法律案(参院先議案件)
? 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案
一方、衆議院の厚生労働委員会で審議中の8法案については、5月16日段階では、まだ衆議院の審議を終えていませんでしたが、17日、衆院厚生労働委員会が開かれ、健康保険法等の一部改正案、良質な医療を確保するための医療法等の一部改正案等の最後の質疑が行われ、昼前、社民党委員の質疑が終わった時点で採決、賛成多数で可決、翌日18日、衆院本会議で可決され、ようやく衆議院を通過しました。
残りの会期が短いいだけにヤキモキしていましたが、やっと参議院での審議が来週から始まります。残り1ヶ月弱の会期で、これらの法案の成立を期さねばなりません。国対委員としてはこれから一層大忙しとなりそうです。
さて、私は、昨年まで約1年、厚生労働大臣政務官として労働行政を担当していましたが、今国会では労働関連でも重要な法案があります。そのうち、既に参議院での審議を終えた労働関係の2つの法案をご紹介しておきましょう。
第一に上記?の男女雇用機会均等法および労働基準法ですが、現行の法律では、女性の雇用等について主な規定として次のようなものがあります。
男女雇用機会均等法
? 雇用管理の各ステージにおける女性に対する差別の禁止
? 結婚・妊娠・出産を理由とする解雇等の禁止(第8条第2項・第3項)
? 募集・採用、配置・昇進・教育訓練、一定の福利厚生、定年・退職・解雇について、女性に対する差別の禁止
? 女性のみを対象とした取扱いや、女性を優遇する取扱いを原則禁止、ただし男女間に生じている格差を解消することを目的として行う措置は違法でない
労働基準法(女性関係)
? 賃金について、女性であることを理由とした男性との差別的取扱いの禁止
? 産前産後休業その他の母性保護措置
? 坑内労働の禁止等女性労働者に対する措置
このような現行法令について、今回の改正案は次のような改正を企図しています。
? 募集・採用、配置・昇進・教育訓練、一定の福利厚生、定年・退職・解雇、雇用形態・職種の変更等について、男女いずれの場合であっても、性別を理由とする差別の禁止
? 募集、採用等の措置において、性別を理由としていない場合であっても、厚生労働省がそのおそれがあるとして省令で定めるものについては、業務の性質に照らして、性別による差別を必要とする合理的な理由がある場合以外、その措置を禁止する
? 妊娠中の女性労働者、出産後1年を経過しない女性労働者の、それを理由とする解雇は禁止
? 性的な言動(いわゆるセクハラ)に起因して不利益をこうむったり、相談のに応ずるための体制の整備義務
? 女性の坑内労働の規制の緩和(妊娠中、または産後1年以内、18歳以下の女性について規制)
次に、職業能力開発促進法及び中小企業労働力確保雇用改善法では、次のような課題を目的とする改正案となっています。
わが国では、今、少子高齢化が急速に進んでおり、このまま行けば、現在6600万人の労働力人口が2015年までには約400万人も減ってしまう(いわゆる2007年問題)と、予想されています。
我が国の経済の活性を保って行くためには、これからは、高齢者や女性がもっと就労しやすい環境を整備することが必要です。
また、最近、若者の失業者やフリーター、ニートなどと呼ばれる若者が400万人もいると言われていますが(中には心ならずもそのような環境におかれている人も多いのですが)、そのような若者たちに実践力を鍛える機会や雇用機会を用意してゆくことも重要です。つまり、このような課題に対処するための関係法令の改正です。厚生労働省は次のように主な改正点を説明しています。
? 実習併用職業訓練の創設など若者支援を強化する。
事業主が行う職業訓練として、「業務の遂行の過程内において行う職業訓練(いわゆるオン・ザ・ジョブトレイニング、OJT)」と「教育訓練機関における座学」とを相互に組み合わせて実施する「実習併用職業訓練」を位置付け、その上で、青少年を対象に、一定の基準を満たす「実習併用職業訓練」を実施する事業主を支援する制度を創設する。こうした訓練について就労、就学に次ぐ、「第三の選択肢」としての定着を図る。
? 青少年に対する職業訓練について、基礎的な職業能力を習得して、自立できるよう配慮する旨規定する。
? 労働者が、自発的に行う職業能力開発に係る基本理念を新たに位置付けるともに、そのために事業主が講ずる環境整備措置として、勤務時間短縮や再就職準備休暇等を追加する。
? 熟練技能の習得を促進するために事業主が講ずる措置として、熟練技能に関する情報を体系的に管理し、提供すること等を規定するとともに、そうした措置の適切かつ有効な実施が図られるよう、厚生労働大臣定めの指針を策定することとする。
また、中小企業における技能継承が円滑に図られるよう、新たに青少年を雇用し、実践的な職業能力の開発及び向上を図り、技能継承の受け手となる人材を育成する中小企業者に対する支援措置を設ける。
[haiku="夏山や又大川にめぐりあふ (飯田蛇笏)"/haiku]