藤井基之の国会レポート2006(その9)
秋9月になっても、真夏並みの暑さが続いていましたが、中旬になって朝夕はひんやりとする季節となりました。そんな中、全国遊説の旅を、元気に続けています。7月上旬から続く遊説行脚も、もう2ヶ月。ああ、いつの間にか秋になってたんだと、思いながらの旅です。9月は、東海、近畿地区を回っています。9月20日には、自民党総裁選がありますので、東京に戻る予定です。
(平成19年度予算概算要求)
さて、地方を行脚中の中央での話題は、平成19年度の各省庁の概算要求が財務省に提出されたことでした。平成18年度国の一般会計予算は、何年ぶりかで80兆円を下回りましたが、来年度予算はどうなるでしょうか。予算編成作業は、9月から12月にかけておこなわれます。ここでは、厚生労働関係の概算要求をみてみましょう。
まず、厚生労働省の概算要求額は、21兆6062億円で、平成18年度の20兆9417億円に対し6645億円の増額要求となっています。厚生労働省の予算は、各省庁予算の中では最も大きな額となっています。平成18年度予算でみますと、総額80兆円弱の予算のうち20兆円、約25%を厚生労働関係予算が占めています。
平成19年度の厚生労働省予算概算要求額20兆9417億円の内容をみますと、年金、医療等に要する経費、つまり社会保障費の国の負担分で、19兆6335億円、対前年5288億円の増となっています。来年度は医療費の引き上げなどはないわけですが、それでも予算が増額要求されているのは、社会保障費の自然増があるからです、つまり、高齢化によって毎年、年金の受給者が増えていますから、当然、年金給付に必要な予算は増えます。また、やはり高齢化によって医療費も増えます。それが“自然増”といわれる予算の増加分です。
実は、厚生労働省が試算したところでは、来年度の自然増は7700億円と見積もられています。ところが、要求は5288億円の増に抑えられています。
今年、7月、各省庁の概算要求に先立って、政府は、「平成19年度予算概算要求基準」、いわゆるシーリングの基準を発表しました。それによりますと、社会保障費関係では、7700億円の自然増見込みに対し、2200億円の抑制をすることとされていました。つまり、シーリングに従った概算要求となっているわけです。
しかし、考えて見ますと、自然増は、来年、年金受給者は何人増えるか、とか、高齢化で老人保健の対象となる人が何人増えるかなどを見込んで計算しているわけですから、7700億円自然増はなかなか確度が高いものでしょう。とすれば、どこを節約して7700億円の増加を5288億円に抑えるのかということになります。現時点では、社会保障費のうち、労災関係の事業費、生活保護費等の見直し等が上げられているようですが、これから、年末の政府案決定まで検討が続くこととなります。
厚生労働省の概算要求の細かい内訳をみますと、まず、医療提供体制の充実に係わる予算として、地域医療提供体制の確保337億円、医師、薬剤師、看護師等の資向上に係わる費用104億円などが計上されています。
また健康フロンティア戦略予算として、生活習慣病予防対策など156億円、健康寿命を延ばす科学技術の振興費292億円、インフルエンザ対策など感染症対策に2099億円、がん対策207億円。少子化対策・地域子育て支援費として4334億円、医薬品関係では、医薬品の安全対策、治験の促進等に117億円、医薬品・医療機器の国際競争力の強化71億円、後発品使用促進1.1億円等が計上されています。
そして、厚労省予算の中核、医療保険国庫負担金は8兆4159億円、年金給付国庫負担金は6兆9128億円の要求となっています。
9月から12月にかけて、各省庁の概算要求について財務省が査定、年末には政府原案が決定されます。
(平成18年度厚生労働白書)
平成18年度版の厚生労働白書が発表されました。厚生労働白書は毎年1回発表されており、直近1年の社会情勢等を検証し、今後の厚生労働行政のあり方について同省の方針を示しています。
平成18年度版白書では、「日本が人口減少時代に入った」ことを基盤に、厚生労働行政の現状や課題を説明しています。人口動態調査によれば、2005年、わが国出生子数は106万人、死亡者108万人で、2万人の減少となりました。実は都道府県単位では20年ほど前から人口減となっている県があり、2005年では約半数の23道県で人口が減少しているそうです。
このような人口減少時代を踏まえ、白書では、「新しい支え合いの循環のある社会」を一つの社会の姿として示した、としています。
「支え合いの循環」とは、?皆で支え合う社会の基盤としての「家族」、?その家族を支える「地域」、?家族や地域とすごす時間に大きな影響を与える「職場」の3つのファクターに着目し、「家族と地域と職場との関係」が円滑に循環する社会こそ、国民が安心し、充実感を持って生活できる社会である、としています。
具体的な施策のイメージとしては、例えば高齢者施策として、家族には、?働きたい高齢者、?地域に貢献したい高齢者、?支援を必要とする高齢者がいる。そこで、職場について、?企業における65才までの定年の引き上げ、?高齢者の経験を生かした企業の立ち上げ支援、?生きがいを感じながらの就労支援,等の施策を講ずるとしています。そして、地域では、?高齢者が支え手となって支援が必要な高齢者を支える、など定年退職者の地域参加支援のための施策、?地域での世代を超えた老若幼の交わりの場の構築、等の施策を進めるとしています。
白書は、高齢者施策の他、「子育て世代の支え合い」、「若者の支え合い(フリーターやニート対策など)、「地方都市における支え合い(雇用創出の取り組みなど)、「農山漁村など人口減が進んだ地域における支え合い」、等のテーマで厚生労働行政の方向を説明しています。
その支え合い社会の基盤は社会保障制度であり、医療や年金、介護など国民のセーフティネットの強化を図るために、その改革を進めているのだという厚生労働行政の思いを国民に理解してほしいと、白書は呼びかけているのでしょう。厚生労働省のホームページで、白書は読むことが出来ます。一度のぞいてみたらいかがでしょう。
今月は、次のような句を見つけました。この頃は涼しくはなってきましたが、ついこの間までの遊説中の残暑を思い出させる1句です。「秋暑」は、残暑を現す季語だそうです。
[haiku="秋暑くとも 快晴の旅路かな (稲畑汀子)"/haiku]