選択療養制度の創設
アベノミクス第三の矢(日本再興戦略)の実行に向けての検討状況について、医療に関する概要を先月解説し、規制改革会議の動きについても簡単に触れました。今回は規制改革会議が提案している「選択療養制度」について、提案の内容と関係者の反応を解説します。
我が国の医療は、国民皆保険制度のもとで、世界的に見て最も優れていると世界保健機関(WHO)からも評価され、世界一の長寿国という結果がそれを示しています。保険医療においては、保険外医療との併用(いわゆる混合診療)を禁止していますが、併用が認められるケースとして「評価療養」と「選定療養」が保険外併用療養として存在しています。評価療養は、将来的に保険が適用される可能性のある医療サービスであり、先進医療、治験診療、保険収載前医薬品の使用等が含まれ、保険診療と自費診療の併用が認められています。選定療養は、いわゆる差額ベッド、予約診療等であり、医療部分は保険が適用され、アメニティ部分を自費にするというものです。
さて現在、規制改革会議は「いわゆる岩盤規制」を切り崩すとして規制緩和策を検討していますが、その一つが3月27日に公表された「選択療養制度の創設」です。評価療養、選定療養に選択療養を加えようとするものです。選択療養創設の目的について規制改革会議は、治療に対する患者の主体的な選択権と医師の裁量権を尊重し、困難な病気と闘う患者が治療の選択肢を拡大できるようにし、そのため、一定の手続き・ルールの枠内で、患者が選択した治療については極めて短時間に保険外療養費の支給が受けられるようにすることであるとしています。一定の手続き・ルールについては、患者がその診療を選択するにあたって必要な情報が医師から患者へ十分に提供され、書面で確認できること、医師へのモラルハザードが防止できることを大前提とすべきとされています。
このような選択療養の提案に対しての関係者の反応ですが、医療関係団体、保険者団体、患者団体のいずれもが反対の声をあげています。4月3日には健康保険組合連合会・国民健康保険中央会・全国健康保険協会が見解を発表し、また同日、日本難病・疾病団体協議会が要望書を公表し、5月14日には国民医療推進協議会(日本医師会を中心に、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会等40団体で構成)が決議を採択しています。いずれも現行の評価療養の機動性を高めること(承認手続きを迅速化することなど)で対応できるとし、患者と医師の合意だけで成立する選択療養に対して強く反対しています。
6月に改定される成長戦略の策定に向けて、官邸サイドの強気な姿勢が目立っており、どのような結末になるのか、国民皆保険制度に悪影響が出ることにならないか大変心配になります。