医療費改定を新たな薬剤師の時代の幕開けに
4月1日、医療費及び薬価基準の改定が実施されました。同時に、「高齢者の医療の確保に関する法律」が施行され、新しい後期高齢者医療制度も実施の運びとなりました。
後期高齢者医療制度の発足により、健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度からなる公的医療保険制度、これらに介護保険制度を合わせ、高齢社会の医療・介護の全体的な社会保険体系が出来上ったわけです。また、高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて、「医療費適正化計画」及び「特定健康診査及び特定保健指導制度」が脇を固め、制度の安定的な運営を図ることとされています。
さて、今回の医療費改定のポイントとして、厚生労働省は次の3点を挙げています。
①緊急課題への対応・重点的に評価する項目 産科・小児科医療、病院勤務医の負担軽減、救急医療への対応 、がん対策、脳卒中対策、自殺対策等
②適正化・見直し等を行う項目 外来医療管理、7:1入院基本料、外来精神医療、後発医薬品使用促進等
③後期高齢者に相応しい医療 在宅療養生活の支援(退院時の支援、訪問看護の充実、介護サービスとの連携)、外来における慢性疾患の継続的な医学的管理、「お薬手帳」の活用、終末期における情報提供 等
今回の診療報酬、調剤報酬の改定率は、確かに、全体で0.38%引き上げ、調剤報酬で0.17%引き上げと、低い引き上げ率であり、薬価等の1.2%引き下げを加味すると0.82%のマイナス改定となりました。しかし改定の内容をつぶさにみますと、新たな高齢社会の医療・介護体制の中での薬局や病院の薬剤師の役割、そして医療提供施設としての薬局の今後の役割が明確になってきていることが感じられます。
まず、調剤報酬関係の点数をみてみますと、「夜間・休日加算40点」が新設されています。これは、上記のポイント①の地域の救急医療体制の整備の一環です。
また、ポイント②では、後発医薬品の使用促進のための措置として、処方せん様式の変更に加え、1)後発医薬品の調剤率30%以上の薬局の評価、2)後発品の「お試し」のための分割調剤を可とする「後発医薬品分割調剤5点」、などが新設されています。
後発医薬品の使用促進については、在庫医薬品の増加など、薬局の負担が大きくなることが懸念されていますが、一方、今回の改定により、後発品の品質に対する信頼性や情報の質や量等を勘案して、薬剤師が主体的に医薬品の選択等について患者に助言し、患者の医療費の節減に貢献できるわけですから、薬剤師の新たな職能として、今後、実績を積んでいただきたいものです。
ポイント③の後期高齢者に相応しい医療に関しては、「在宅患者緊急時等共同指導料700点」、「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料500点」などが新設されています。また、終末期における医学的管理に関して、「後期高齢者終末期相談支援料200点」が新設されています。
従来の調剤報酬改定は、他の医療職種とは必ずしも関連しない薬局独自の技術評価が中心となってきましたが、医薬分業が50%を超えた今、地域医療体制の中に、薬局が重要な医療提供施設として組み込まれていることが、これらの点数に表れていると言えるでしょう。
さらに注目されるのは、新しい外来服薬支援料185点です。これは、複数の医薬品を服用している患者が、自分ではその管理が難しくなっているときに、その服薬中の薬剤(調剤済みの薬剤)を薬局に実際に持参してきてもらい、その薬剤の処方医の意見も確認の上で、一包化するなど、服用中の薬剤の全体的な管理をするという点数です。
この点数に併行する形で、病院薬剤師の点数として、「後期高齢者退院時薬剤情報提供料100点」が新設されています。これは後期高齢者が入院する際に、患者が持参したこれまで服用していた医薬品等を確認する、そしてその患者が退院する際にも、入院中に服用していた医薬品についての服用歴や副作用、その措置などについておくすり手帳などに記録して患者に提供する。つまり、「退院後も、薬剤の情報管理等が継続的に行われるような取組み」に対するフィーです。まさに「薬・薬連携」により、薬局薬剤師、病院薬剤師が協力して、自分の薬局や病院で調剤した薬剤だけでなく、患者が服用する薬剤の全体的、かつ継続的な管理を行うことを期待した点数です。薬剤師業務の広がりを感じさせてくれる画期的な点数といってよいでしょう。
病院の薬剤師に係わる点数としては、医師、薬剤師などのチームによるがんの外来化学療法体制が整備されている医療機関に対する加算500点又は390点、がん治療における専任の薬剤師の配置が条件となる緩和ケア加算の引き上げが行われています。これらは、上記のポイント①の重点的評価項目のうち、がん対策に対応するものです。また、同じく脳卒中対策として、「超急性脳卒中加算(薬剤師の常時配置が算定要件)12000点」が新設されています。
その他、これまで薬剤管理指導料は、有床診療所には認められていませんでしたが、今回、有床診療所にも薬剤管理指導料を適用されることとなりました。厚労省の資料によれば、有床診療所の薬剤師の配置数は少なく、評価は十分なものではありませんでしたが、今回は、そうした診療所における医薬品の安全管理における薬剤師の業務に対する評価が行われたわけです。
こうして見て来ますと、今改定は、薬剤師職能の広がり、新しい薬剤師の可能性を予感させる改定であると、積極的に捉えてよいのではないでしょうか。