3月3日(月曜日) 株式会社による医療機関経営
今日はひな祭り。梅の花が咲き,桃の花もほころんできました。世は平和、といいたいところですが、イラク問題はますます緊迫しています。国会でも厳しい議論が続いています。 さて、先週末、「自由診療分野に限り、株式会社経営による医療機関を認める」とのニュースが流れました。 2月27日、総理大臣官邸で構造改革特別区域推進本部(第2回)が開催され、構造改革特区の第2次提案に対する政府の対応方針」が決定されました。同会議で、今年1月15日までに地方公共団体、民間事業者等から提案を受けた651件の構想について個々に検討が行われ、構造改革特区または全国において実施すべき規制改革事項が決定されました。その構造改革特区で実施すべき事項の1つとして、「医療機関の株式会社による経営」を「自由診療」に限って認める、という方針が盛り込まれることなったものです。今後は、この対応方針に従って構造改革特別区域法の改正、構造改革特別区域基本方針の改定が進められることとなります。 医療法第7条5項には、「営利を目的として病院,診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては許可を与えないことができる」とあり、また、第54条では、「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない」とあります。つまり、「株式会社」による医療機関経営は認められないということになります。今回の提案は、これらの規定を特区に限り外してみようという試みであるわけです。ただ、実は、企業が社員の厚生施設として開設していた病院で、社員以外の患者にもオープン化した病院があります。これらの経営主体は親会社である「株式会社」ということになります。 それはさておき、今回は「自由診療」に限って認めるという方針となりました。国民皆保険体制下の日本では、医療の90%以上が保険医療であり、自由診療は、美容整形や正常分娩等の一部の医療に過ぎません。その意味では、影響は小さいとも言えますが、しかし、医療保険ではカバーしていない高度先端医療専門の医療機関ができるかも知れません。国民皆保険制度との整合性、バランスを考える必要がありそうです。 また、医薬分業が進み、今日の薬局は保険医療に大きく係っていますが、薬局については、株式会社、有限会社等が認められています。「株式化会社による医療機関経営は医療の質を落とす」などと主張する向きがあります。しかし、薬局は服薬指導等の医薬品安全確保業務につとめ、積極的に医療の向上に取り組んできました。そのような主張に対しては、反発を覚えます。 ただ、医薬分業が進んでいなかったために、医療法における薬局の位置付けが曖昧にされてきた部分がありますが、そろそろ医療機関としての薬局の位置付けを確立するために、どのような姿が最も適切か、議論が必要な時期かもしれません。